抜髄ってどんな処置?虫歯治療の知識・手順を解説

抜髄ってどんな処置?虫歯治療の知識・手順を解説

虫歯の処置について説明を受けていると、「抜髄(ばつずい)」という言葉を耳にすることがあります。しかし、ほとんどの人は「抜髄とは、どのような治療なのか」をあまりご存じないと思います。

こちらの記事では、「抜髄とは何か」を主軸として、歯科治療に関する基礎知識をお届けすることにしました。歯医者さんの治療説明をきちんと理解するための一助として、お役立ていただければ幸いです。

この記事の目次

1.抜髄とは何か?

一言で表すならば、抜髄とは「神経を抜くこと」を意味します。世間一般で「歯の神経」と呼ばれている部分は、正式名称で「歯髄」と呼ばれます。「歯髄を抜去する処置」なので、「抜髄」です。この章では、「歯の構造」を説明した上で、「どんなときに抜髄が必要なのか」をお伝えすることにしましょう。

1-1 歯の構造を知れば、歯科治療が見えてくる!

それでは、「歯の構造」を外側から順に解説することにします。

エナメル質

歯の表面を覆っている2~2.5mm程度の層です。「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれる材質でできています。非常に硬いですが、「pH5.5以下の酸性環境」で溶け出します。エナメル質が虫歯になった状態を「C1:エナメル質齲蝕」と呼んでいます。

象牙質

エナメル質の内側にあるのが、象牙質です。神経は通っていませんが、象牙質を刺激すると痛みを感じます。「象牙細管」という細かい穴があいていて、象牙細管内の「組織液」と呼ばれる液体が刺激を伝えるからです。象牙質が虫歯になった状態を「C2:象牙質齲蝕」と呼んでいます。

歯髄

象牙質の内側には、「歯髄腔」と呼ばれる空間があります。そして、歯髄腔の中にあるのが「歯髄」です。これが、一般に言われるところの「神経」です。実際には、神経だけでなく血管も通っています。歯髄が虫歯に感染すると、「歯髄炎」と呼ばれる炎症を起こします。何もしなくてもズキズキと痛む虫歯は、すでに歯髄炎になっています。歯髄まで到達した虫歯は「C3:歯髄の仮性露出」と呼ばれます。

根管

歯髄腔から、歯の根っこ方向に伸びている細い空洞が「根管」です。神経・血管の通り道になっています。非常に細く、入り組んだ構造です。いわゆる「神経」は、歯髄腔から根管へとつながっています。

1-2 虫歯がどこまで進むと、抜髄が必要?

それでは、虫歯の進行度ごとに「抜髄する必要性の有無」を確認してみましょう。

C1:エナメル質齲蝕

虫歯が歯の表層―エナメル質にとどまっている状態です。この段階では、痛みをまったく感じません。非常に浅い虫歯なので、抜髄の必要はありません。虫歯になった場所を削り、コンポジットレジン(歯科用プラスチック樹脂)を詰めれば、完了です。

C2:象牙質齲蝕

象牙質に達した虫歯は、「冷たいもの」「甘いもの」を食べたときにしみることがあります。ただ、何もしなくてもズキズキ痛む…ということはありません。虫歯と歯髄の距離が2mm以上なら、削って詰め物を入れる治療をします。虫歯と歯髄の距離が2mmより短い場合、歯髄を保護する薬剤を入れてから詰め物をすることになります。やはり、抜髄の必要はありません。

C3:歯髄の仮性露出

歯髄炎を起こした虫歯は、何もしなくてもズキズキと痛みます。この痛み方を「自発痛」と呼んでいます。この状態になると、神経を保存するのは困難です。局所麻酔下で抜髄をおこない、「神経を抜く治療」をします。

抜髄が終わったら、「根管治療(歯内療法)」をおこないます。「ファイル」「リーマー」と呼ばれる針状の器具で、歯髄腔と根管をきれいに掃除します。虫歯菌に感染した箇所を除去して、歯の内部を無菌化するのです。再感染を防ぐために「ガッタパーチャポイント」「MTA」などの薬剤を充填して、最後にかぶせ物(または詰め物)で歯を覆います。

C4:残根

あまりに悪化すると、歯医者さんを受診した時点で、歯髄が死んでいることがあります。神経がないので、すでに痛みを感じることもありません。歯髄が死んだばかりなら「感染根管治療」で歯を救えることもありますが、多くの場合は抜歯となります。

2.抜髄処置~根管治療の手順

それでは、深い虫歯に対する治療の手順を確認してみましょう。具体的には、C3の虫歯に対しておこなう「抜髄~根管治療」の手順です。

2-1 虫歯を除去したあと、歯髄への穿孔を実施!

まずは、虫歯菌に感染した歯質を除去します。虫歯を取りのぞけたら、さらに削って歯髄を露出させます。そして、「ファイル(針の先端がやすり状になった器具)」を使い、歯髄を除去します。歯髄腔はもちろん、根管の内部にある歯髄を含めて、きれいに取り除かなくてはなりません。いわば、歯の内部を空っぽにする作業です。

歯の内部を治療するとき、周囲の唾液が入りこむと、虫歯の再発率が上がります。唾液の侵入を防ぐため、治療中の歯をゴムのシートで覆い、周囲とわける処置をおこなうことがあります。この処置を「ラバーダム防湿」といいます。

2-2 ファイルを使って、根管を拡大する!

抜髄が終わったら、根管治療に入ります。根管治療では、まず「ファイル」を使って根管の壁を削ります。普通は0.1~0.2mmくらいの細い根管がいくつも枝分かれしていますが、これを0.4~0.5mmの太くて真っ直ぐな空洞にまとめます。この作業を「根管拡大」と呼んでいます。

2-3 根管充填をおこない、再感染を防ぐ!

根管が十分に拡大できたら、内部に薬剤を詰めます。「ガッタパーチャポイント」「MTA」などの薬剤を詰めこんで、根管内の再感染を予防するわけです。隙間ができないように、圧力をかけながら薬剤を詰めていきます。この処置を「根管充填」と呼びます。

2-4 最後に詰め物・かぶせ物をして完了!

根管治療が終わったら、詰め物・かぶせ物をして完了です。虫歯が小さければインレー(詰め物)、大きければクラウン(かぶせ物)を入れます。自由診療であれば、セラミック製の白い詰め物・かぶせ物を使うこともできます。

3.まとめ

抜髄は、「神経を抜くための処置」です。何もしなくてもズキズキ痛む大きな虫歯には、抜髄処置をおこなわなくてはなりません。神経のなくなった歯は血管からの栄養供給が途絶えるので、死んだ歯(失活歯)となります。抜髄した歯の寿命は10年以上縮む…と考えられています。なるべくなら、抜髄しなくて良い段階で治療を受けるようにしましょう。

 

先生からのコメント

歯は一度削ったら元には戻りません。虫歯、抜髄、感染根管、抜歯と進みますので、予防、早期治療が一番です。

医院情報
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電話:03-3601-7051
執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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