歯周病は、歯を失うリスクが高い病気です。
虫歯は進行すると痛みが生じますが、歯周病は自覚症状がないまま進行します。気づいたときには重度で、歯がグラグラ揺れはじめているというケースも珍しくありません。末永く自分の歯を保存していくには、歯周病の予防や早期発見がポイントです。
この記事では、歯医者さんでの基本な歯周病治療の「費用の目安」を、保険診療を中心に紹介しています。
この記事の目次
1.歯周病治療の費用の目安~保険診療編~
保険診療の費用は“診療報酬点数”で定められており「1点=10円」で算出します。例えば、健康保険の適用によって自己負担が3割になる人は「点数×10円×0.3(10円未満は四捨五入)」を会計時に支払うことになります。
症状や歯医者さんによって検査内容・処置内容が変わるほか、検査費用・治療費用以外に初診料などもかかってきます。詳細な費用について不安な点があれば、歯医者さんを受診する際に確認しておきましょう。
1-1 歯周病の検査費用
まずは検査をおこないます。歯周検査には「歯周基本検査」「歯周精密検査」の2種類があります。
歯周病など病気であると判断され、保険診療における治療の流れに沿って処置できる場合、保険が適用されます。
■歯周基本検査の内容■
- ・歯周ポケットの深さの測定
・歯の動揺度の検査
「プローブ」と呼ばれる針状の器具で歯周ポケットの深さを計測します。歯と歯茎の隙間にプローブを差しこみ、約25gの規格圧(標準として定められている圧力の強さ)をかけて止まった場所を歯周ポケットの底と判断します。
この刺激で出血があれば、炎症があると判定されます。そのほか、すでにグラグラしている歯がないか、歯垢の付着状況といった項目もチェックします。
《費用の目安》 カッコは3割 1~9本:保険点数50点=500円(150円) 10~19本:保険点数110点=1100円(330円) 20本以上:保険点数200点=2000円(600円) |
■歯周精密検査■
- ・歯周ポケットの深さ測定(1歯につき4か所)
・測定時の出血有無を検査
・歯の動揺度検査
・歯垢(プラーク)の付着度確認
同じ歯でも、場所によって歯周ポケットの深さが異なる場合があります。歯周精密検査では、基本的に1歯につき4カ所の深さを測るため、より精密な診断を下すことができます。
《費用の目安》 カッコは3割 1~9本:保険点数100点=1000円(300円) 10~19本:保険点数220点=2200円(660円) 20本以上:保険点数400点=4000円(1200円) |
1-2 軽度歯周病の治療費用
■スケーリング■
歯周ポケットが3~5mm程度の軽度の歯周病(※)では、スケーリングがおこなうのがベーシックです。「スケーラー」と呼ばれる器具を歯周ポケットに差しこみ、歯周病の原因となる歯石を除去する治療です。
《費用の目安》 カッコは3割 初回 3分の1顎:68点=680円(204円) 3分の1顎増すごとに加算:38点=380円(114円) 2回目以降 3分の1顎:34点=340円(102円) 3分の1顎増すごとに加算:19点=190円(57円) |
※歯周ポケットの深さにより軽度、中等度、重度といったように重症度が区分されることがあります。しかし、重症度の診断基準は統一されておらず「何mm」からが軽度・中等度・重度であるという明確な基準はありません。3mm以内ほどであれば、健康な歯茎の状態とも言われています。
1-3 中等度歯周病の治療費用
■スケーリング・ルートプレーニング■
歯周ポケットが5~6mm程度の中等度歯周病では、スケーリングだけでは歯石を除去できません。その場合、スケーリング・ルートプレーニングをおこなうことで、より深い部分の歯石を除去します。
「キュレット」と呼ばれる器具を使い、歯周ポケットの深いところにある歯石を削りとります。痛みを感じることもあるため、麻酔を使うケースもあります。なお、麻酔は保険点数に含まれているので、追加費用はかかりません。
《費用の目安》 1歯あたりの費用・カッコは3割 初回 前歯:60点=600円(180円) 小臼歯:64点=640円(192円) 大臼歯:72点=720円(216円) 2回目以降 前歯:30点=300円(90円) 小臼歯:32点=320円(96円) 大臼歯:36点=360円(108円) |
■歯周ポケット掻爬術(そうはじゅつ)■
中等度~重度に差しかかる歯周病には、歯周ポケット掻爬術がおこなわれることがあります。
スケーリングやルートプレーニングでは取り除けない部位にある歯石や、炎症を起こしているセメント質(歯の根元にある組織)を、歯周ポケットを切開して除去する治療法です。外科手術なので、麻酔をしておこないます。
《費用の目安》 1歯あたりの費用・カッコは3割 80点=800円(240円) |
1-4 重度歯周病の治療費用
■フラップ手術■
歯周ポケットが6~7mm程度以上の重度歯周病には、フラップ手術がおこなわれることが多いです。正式には「歯肉剥離掻爬手術(しにくはくりそうはしゅじゅつ)」と言います。
麻酔をして歯茎を切開したあと、スケーラーで歯周ポケット内の感染部位を除去します。状況によっては、GTR法といった「歯周組織再生誘導法」をおこなうこともあります。
《費用の目安》 カッコは3割 1歯につき:630点=6300円(1890円) |
2.歯周病治療の費用目安~自由診療編~
自由診療の場合、保険点数のような一律の金額設定はありません。歯医者さんごとに、自由な価格設定が認められています。ここでは、費用の目安を紹介します。
※自由診療の費用はすべて、歯の教科書調べです(2019年2月時点)。
2-1 自由診療における歯周病検査
■歯周病検査■
自由診療の歯周病検査は、歯医者さんごとに内容が異なります。
唾液に含まれる細菌を調べる「唾液検査」、口腔内の歯周病菌を目視検査する「位相差顕微鏡による検査」のほか「口臭検査」や、歯科用CTによる「レントゲン検査」などがおこなわれています。
《費用の目安》 1~3万円程度 |
2-2 歯周病予防、軽度・中等度歯周病の治療費用
■口腔除菌療法■
検査のあと、歯科衛生士による口腔クリーニングをおこない、続いてドラッグリテーナー(マウスピース状の器具)に、歯周病菌を殺菌するための薬剤を入れて装着する治療法です。
殺菌作用のある歯磨き粉やシロップをつけてのブラッシング、同じく歯周病菌を減らす作用のある内服薬などを用いる歯医者さんもあります。
《費用の目安》 4万円程度 |
■スケーリング・ルートプレーニング■
自由診療のスケーリングやルートプレーニングを提供している歯医者さんもいます。
基本的な処置の内容は保険診療と変わりませんが、使っている器具が違ったり、一度に処置できる時間や範囲が広いためじっくり治療をうけることができたりします。
《費用の目安》 スケーリング:3千円~1万円程度 ルートプレーニング:1千円~1万円程度 |
2-3 重度歯周病の治療費用
■フラップ手術■
自由診療のフラップ手術をおこなう歯医者さんもあります。
歯茎を切開して、歯の根の方に溜まった歯石や、感染しているセメント質などを除去してきれいに洗浄・消毒してから歯茎を縫合します。
《費用の目安》 1~10万円程度 |
■歯周組織再生療法■
歯槽骨が溶かされるなど、歯周組織の破壊も進んでいる場合「再生誘導剤」を用いた歯周組織再生療法がおこなわれることもあります。
フラップ手術で歯茎を切開して歯根をきれいにしたあと、特殊な薬剤を塗って、破壊された歯槽骨の再生を促します。再生誘導剤を用いた治療は、歯周病の状態や患者さんの健康状態などによって適用されないこともあります。
《費用の目安》 5~15万円程度 |
3.まとめ
歯周病で歯を失わないためには、なるべく初期の段階で進行を抑え、改善させることが重要です。早期発見・治療開始ができれば「歯周ポケットを縮小させること」も十分に期待できます。
逆に、放置して進行してしまうと治療期間も長く、大がかりになることが少なくありません。
歯磨きのときに歯茎から出血がある、歯茎が下がって歯が長くなったように感じる、口臭が強くなった気がする、といった人は、一度歯医者さんで歯周病検査を受けましょう。
可能であれば、出血などの症状がなくても定期的に歯医者さんで健診を受けることをおすすめします。
※保険点数は、国が2年ごとに見直しをおこなっています。この記事で紹介しているのは平成30年4月1日からの診療報酬点数です。
歯周治療基本は歯ブラシができないと先に進みませんし、保険の場合、治療の流れがあり、それにしたがって治療していくので、それなりに時間がかかります。かかりつけの歯科医師とよく相談して下さい。
電話:03-3601-7051
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歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。