口のまわりに「水ぶくれ・発疹」が出ているなら、「口唇ヘルペス」を発症している恐れがあります。口唇ヘルペスの場合、痛み・かゆみを伴い、複数の水ぶくれが群発する傾向があります。
こちらの記事では、口唇ヘルペスの原因を解説していますので、ぜひとも参考にしてください。
この記事の目次
1.口唇ヘルペスの原因は「単純ヘルペスウイルス」
口唇ヘルペスはウイルス感染症の1つなので、根本原因はウイルスです。口唇ヘルペスを引き起こすウイルスを「単純ヘルペスウイルス」と呼んでいます。「単純ヘルペスウイルス」には2種類が存在して、口唇ヘルペスの原因になるのは主に「単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)」です。一方の「単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)」は性器ヘルペスの原因として知られています。
とはいえ、「1型=口唇」「2型=性器」という厳密な区分が成り立っているわけではありません。1型のウイルスが性器周辺に感染し、水泡の原因になることもあります。単純ヘルペスウイルスは種類を問わず、身体のいろいろな部位に感染すると考えてください。
1-1 単純ヘルペスウイルスは、あなたの体内にも存在している!?
「ヘルペス」などという用語を使うと何だか珍しい病気のように感じるかもしれませんが、そんなことはありません。たとえば、幼少期、多くの子供が罹患する「水疱瘡(みずぼうそう)」は「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって発症する感染症です。「水痘・帯状疱疹ウイルス」もまた、ヘルペスウイルスの仲間です。
実際、単純ヘルペスウイルスを体内に保有している人の割合は多く、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)には7~8割、2型(HSV-2)には1割弱の日本人が感染していると考えられています。ウイルスが体内にいても症状が出ないことのほうが多いので、ふだんは気づかないだけです。
参照URL:http://herpes.jp/basic/index.html
1-2 単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は三叉神経に潜伏!
無症状のとき、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は「三叉神経節」と呼ばれる場所に潜伏しています。「三叉神経」は「眼神経・上顎神経・下顎神経」の根元にあたる神経で、三叉路のように3つの枝に分かれることから三叉神経と呼ばれています。「神経節」は神経細胞が集合した部位を指しており、三叉神経節は「三叉神経の神経細胞が集合した部位」という意味になります。
いったん感染すると、単純ヘルペスウイルスが体内から根絶されることはありません。ヘルペスウイルスは免疫細胞に殺されないような防御機構を持っているので、体内のヘルペスウイルスがゼロになることはないのです。そのため、一度でも感染したことがあれば、死ぬまで、三叉神経節の中に単純ヘルペスウイルスを飼い続けることになります。
ちなみに、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は脊髄神経節に潜伏します。1型と2型の違いは「潜伏する神経節の違い」というわけです。1型が顔に発症しやすいのは、三叉神経が顔の神経だからです。
1-3 身体の抵抗力が落ちると、単純ヘルペスウイルスが暴れ出す!
さて、ふだんは三叉神経節の中に潜伏している単純ヘルペスウイルス1型ですが、身体の抵抗力が落ちたときに活動を開始します。三叉神経の末端(上顎神経・下顎神経)まで移動してきて、唇周辺の細胞に侵入するわけです。
細胞に侵入したウイルスは、自分のDNAと細胞核を融合させ、正常な細胞を「ウイルス感染細胞」に変えてしまいます。ウイルス感染細胞はヘルペスウイルスをどんどん増殖させるようになります。
身体の抵抗力が落ちる原因としては、風邪・ストレス・疲労・過度の紫外線を浴びることなどが挙げられます。要するに、いったん単純ヘルペスウイルスに感染すると、弱ったときにいつでも再発する…ということになります。
口唇ヘルペスが多発するのは夏・冬なので、ちょうど「紫外線が強い時期」と「風邪が流行る時期」に重なっています。過度の紫外線を浴びないこと、風邪など全身疾患の予防に努めることが、口唇ヘルペスの予防にもなります。
参照URL:http://www.taisho.co.jp/herpecia/relapse/
2.口唇ヘルペスの治療法はどうする?
口唇ヘルペスは基本的に自然に修復するので、患部を衛生的に保ちさえすれば2週間ほどで軽快します。ただ、水ぶくれがなくなる過程でかさぶたができるので、しばらくの間、見た目が気になるでしょう。また、再発を繰り返している場合などは、水ぶくれになった部分に痕が残ることもあるので、のんびり自然治癒を待つわけにもいきません。
早いうちに治療をおこなえば、それだけ早くもとにもどりますし、症状の悪化も抑えることができます。痕を残さないためにも、早期治療を受けるようにしましょう。
【関連記事】早期発見がカギ!口唇ヘルペスの治療法と費用、4つの予防策
2-1 口唇ヘルペスを内服薬で治療する!
口唇ヘルペスの治療には、抗ウイルス薬を内服するのが基本的です。主な有効成分には、アシクロビル、塩酸バラシクロビルがあります。ただ、塩酸バラシクロビルはアシクロビルにバリン(必須アミノ酸の1つ)を結合させて吸収効率を高めたものです。体内での作用機序はアシクロビルと変わりません。
ただ、吸収効率が高まったことで、「服用回数を減らせる」というメリットが生じています。アシクロビルを主成分とする内服薬は1日5回の服用を要するのに対し、塩酸バラシクロビルを主成分とする内服薬なら1日2~3回の服用で有効性を期待できます。
作用は、ヘルペスウイルスの増殖を阻害することにあります。ウイルスを根絶することはできませんが、今まさに増殖しているウイルスを抑えることはできるわけです。内服薬なら、神経節の中にいるウイルスの増殖を阻害できるので、治療の中心となるのは内服薬です。ウイルスの数をなるべく減らしておけば、そのぶんだけ再発の確率を下げることができます。
2-2 口唇ヘルペスを外用薬で治療する!
皮膚症状を抑えるために、外用薬を使うことが多いです。軽度・再発例の口唇ヘルペスであれば、「市販の外用薬を購入して対処する」という人もたくさんいます。ただし、外用薬は神経節のヘルペスウイルス増殖を抑えることができません。すぐに症状が緩和しないようなら、医療機関を受診して内服薬を処方してもらいましょう。
外用薬としては、アシクロビル、ビダラビンを主成分とした軟膏・クリームが市販されています。
3.まとめ
口唇ヘルペスは、悪化すると痕が残ることもあります。なるべく早期に医療機関を受診したほうが望ましいでしょう。口唇ヘルペスを扱う診療科目は主に皮膚科ですが、一部の歯科口腔外科でも診療をおこなっています。意外に感じるかもしれませんが、歯科口腔外科は「口腔内・口腔周囲の病変を扱う診療科目」という性質があるのです。
暑い夏の季節は特に、脱水や免疫低下を招く時期となりますので、口唇ヘルペス等のできる時期といえましょう。身も心も充実した状態に努めることが最良の予防法ともいえます。
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歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。