歯医者さんで行われている“痛みへの配慮”!痛みを抑えた「現代の歯科治療」

歯医者さんで行われている“痛みへの配慮”!痛みを抑えた「現代の歯科治療」

歯医者さんで治療を受けるのが憂鬱なのは、子供だけではありません。大人だって、歯医者さんに行くのは気が進まないものです。ただ、「歯医者さん=怖い」というネガティブなイメージが、すでに過去のものになりつつあるのはご存じでしょうか? 最近は痛みを抑えた治療提供をかかげる歯医者さんも増えているからです。

なるべく痛まないようにはしてくれますが、痛みがゼロという保証はありません。ただ、麻酔方法などに工夫して痛みを抑えてくれますから、耐えられないような痛みを感じることはないでしょう。

こちらの記事では「痛みの少ない治療」の種類ごとに、「どのようにして痛みを抑えるのか」を解説していきたいと思います。

この記事の目次

1.麻酔を用いた「痛みの少ない治療」を受ける!

もっとも普及しているのは、麻酔を使った「痛みの少ない治療」です。麻酔をかけて、治療中の痛みを抑えるわけです。ただ、「痛みの少ない治療」と呼ぶ場合は、「麻酔を注射するときの痛みまで抑える」という意味合いが加わります。

それでは、どのような方法で「注射の痛み」「治療の痛み」を抑えるのか、「痛みの少ない治療」における麻酔方法を確認してみましょう。

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1-1 「表面麻酔」~注射針の痛みを緩和する麻酔薬

「表面麻酔」は、麻酔注射の痛みを抑えるための麻酔薬です。歯茎の表面に塗ったり、貼りつけたりするだけで一定の麻酔作用を発揮します。表面麻酔薬として使われる主な薬品は、「アミノ安息香酸エチル」「リドカイン」「塩酸テトラカイン」などです。いずれも、歯茎の表面がしびれて痛覚がにぶくなるので、注射針が入る感覚がわかりづらくなります。

1-2 「浸潤麻酔」~もっとも普及している局所麻酔

歯医者さんで使う局所麻酔が「浸潤麻酔」です。歯の根元付近にある「傍骨膜(ぼうこつまく)」という部位に向けて麻酔液を注射し、神経まで浸潤(=染みこむという意味)することを期待します。麻酔作用が発揮されるまでの時間は1分40秒~4分程度。主な薬品は「リドカイン」ですが、「フェリプレシン添加プロピトカイン塩酸塩」「メピバカイン」などが使われることもあります。

ただし、浸潤麻酔だけでは十分な作用が得られないケースもあります。前歯・上顎(うわあご)臼歯などは、たいてい浸潤麻酔だけで十分ですが、下顎(したあご)大臼歯は浸潤麻酔が作用を発揮しにくい部位です。理由は、骨の密度です。下顎は骨の密度が高いために麻酔液がうまく染みこんでくれない場合があります。そのため、骨格のがっちりした男性は、浸潤麻酔が効きにくいとされています。

1-3 「歯根膜麻酔」~浸潤麻酔だけでは不十分なときに

浸潤麻酔だけでは歯髄(歯の中の神経)にいきわたらない場合、歯根膜麻酔をおこなうことがあります。「歯根膜(しこんまく)」というのは、歯と歯槽骨の間にある部位です。骨が麻酔の浸潤を妨げないので、素早く麻酔作用を発揮します。

別名で「歯根膜内注射法」と呼ばれることもあります。薬剤は浸潤麻酔と同じく「リドカイン」が多用されます。歯と骨の隙間に薬を流しこむので、しばらくの間、歯が浮くような違和感が残ることがあります。とはいえ、数日で治まるので心配はいりません。

1-4 「伝達麻酔」~顎全体・広範囲に麻酔をかける

浸潤麻酔で十分な麻酔作用が得られない場合、顎(あご)にある神経叢(しんけいそう=神経の束)に麻酔注射をおこないます。下顎の臼歯は浸潤麻酔が効きにくいので、伝達麻酔をすることも多いです。注射する部位が異なるだけで、薬剤は浸潤麻酔と同じです。多くの場合は「リドカイン」が用いられます。

伝達麻酔のことを別名で「神経ブロック」と呼んでいることから、下顎におこなう伝達麻酔を「下歯槽神経ブロック」と呼ぶことがあります。広範囲に長時間作用するのが強みですが、唇までマヒした状態が長く続くので、麻酔が切れるまでは少し不便な思いをします。

1-5 「電動麻酔器」の使用で、浸潤麻酔の痛みを抑える!

「電動麻酔器」もまた、「痛みの少ない治療」をおこなうための重要な要素です。これは麻酔の注射部位ではなく「麻酔注射をする器材」の名称になります。具体的には、「浸潤麻酔をおこなうときの痛みを低減する医療機器」です。

電動麻酔器は、機械制御で麻酔液を注入する装置です。人間の手でおこなうのに比べて、低速で少しずつ麻酔液を注入できます。麻酔液をたくさん注入すると、液体が入りこんでくる圧力で痛みが生じます。そこで、低圧力で少しずつ麻酔を送りこむ電動麻酔器が役に立つわけです。

1-6 「無針麻酔器」で、注射の痛みを抑える!

また、補助的な麻酔として「無針麻酔器」を使用する歯医者さんもあります。これは勢いよく麻酔液を噴射する装置で、そもそも注射ではありません。しかし、麻酔液を強くたたきつけることで、一定量、歯茎の内側に浸透させることができます。骨量が少なく体の小さい子供なら、抜歯まで可能になるほどの作用を発揮することもあります。

ただ、大人の場合、「無針麻酔器」はあくまでも補助的に用います。表面麻酔と麻酔注射の間に無針麻酔を挟んで、注射の痛みを低減する…などの使い方をします。実際、無針麻酔をしてから麻酔注射をすれば、ほとんど何も感じません。

1-7 麻酔の効き目が出ないときは…!?

患部が炎症を起こしていると、なかなか麻酔の作用が発揮されません。このようなときは、炎症を抑える薬を服用して、炎症が軽くなってから改めて治療をおこなう場合があります。炎症が強く出ていると麻酔さえ作用しにくくなりますから、あまり悪化しないうちに受診したほうが「痛みの少ない治療」を受けやすくなります。

2.レーザーを用いた「痛みの少ない治療」を受ける!

近年は、レーザー治療器を用いた「痛みの少ない治療」をおこなう歯医者さんも増えてきました。レーザーを当てた場所だけが瞬間的に高温になり、患部を切開・除去することができます。痛み・出血が少ないので、麻酔なしで治療できるケースも少なくありません。

ただし、レーザー機器の種類によって「どんな症状に使用できるか」「保険が使えるかどうか」が異なります。

2-1 「エルビウムヤグレーザー」~保険適用で虫歯治療ができる

組織の表面だけに作用するレーザーで、水を一瞬で沸騰させ、水蒸気爆発を起こす仕組みです。水蒸気爆発のエネルギーにより、歯を削ったり、歯茎を切開したりすることができます。虫歯治療において、唯一、保険診療で使用できるレーザーでもあります。ただし、エルビウムヤグレーザーで治療できるのは、軽度の虫歯だけです。

2-2 「ネオジウムヤグレーザー」~組織の深くまで到達する

組織の奥深くまで到達するレーザーで、「柔らかい組織を切除すること」「黒色の部位を除去すること」に向いています。歯茎切開のほか、「歯肉の黒ずみ除去」「根管(歯の根っこ)の虫歯除去」「歯周ポケットの清掃」などに使われることがあります。

2-3 「CO2レーザー」~歯茎の切開に使えるレーザーメス

柔らかい組織の切開・止血に向いたレーザーで、「歯茎切開」「口内炎の治療」に使われます。切開した部位の血液を凝固させる性質から、切開したときの出血が少ない…という特徴を持っています。別名では、炭酸ガスレーザーとも呼ばれます。

3.まとめ

一昔前は、痛みを抑える方法というと、麻酔だけでした。レーザー治療など、「痛みの少ない治療」の選択肢が増えたことは非常に喜ばしい傾向だと思います。

ただし、新しい治療法には一つの共通点があります。「初期の虫歯にしか適用できない」という部分です。

「なるべく早く治療するほど、痛みの少ない治療選択肢が広がる」という事実が浮き彫りになります。痛い思いをしないためにも、虫歯に気づいたら早いうちに歯医者さんを受診する…という習慣をつけておきましょう。

 

施術副作用

先生からのコメント

痛みが無いのがいいというのはよくわかります。他にも麻酔に使う薬剤を人の体温に近い温度まで温めて使用したりと様々な工夫を凝らしている歯医者さんもあります。私自身も日々気を付けていますが、急性症状が出ているときは本当に麻酔が効かないです。痛くなる前に歯科へかかるという習慣がもっと根付くと良いと思います。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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