二次カリエスを予防!虫歯の再発を防いで8020を実現する方法

「きちんと治療したはずの歯が、急に痛み出した」という経験がある方も多いですよね?虫歯は再発することがあります。「銀歯を入れたから、もう大丈夫」と油断するのはNGです。

こちらの記事では、治療済みの歯が再び虫歯になる「二次カリエス」の基礎知識をまとめています。10年後、20年後も自分の歯で噛むために、「虫歯の予防・治療」に関する知識を知っておきましょう。

この記事の目次

1.銀歯の下で再発…!虫歯の半分以上は二次カリエス

すでに治療した歯の内部で、虫歯が再発することがあります。銀歯の裏に虫歯菌が入りこみ、内部が虫歯になってしまうことを「二次カリエス」と呼んでいます。二次カリエスが発生する確率は高く、「大人の虫歯は半分以上が二次カリエス」と言われています。

1-1 どうして、治療した歯に二次カリエスができるの?

詰め物・かぶせ物は人工物ですから、虫歯にはなりません。しかし、詰め物・かぶせ物の奥にある歯は、天然の歯です。虫歯菌が入りこめば、当然、虫歯になります。では、どうして詰め物・かぶせ物の奥に虫歯菌が入るのでしょうか?

1-2 歯と人工物の隙間に虫歯菌が入ると二次カリエスに…!

詰め物・かぶせ物のことをまとめて補綴物(ほてつぶつ)と呼びます。これら補綴物はあくまでも人工物です。本物の歯と一体化しているわけではなく、セメントで接着しているだけです。わずかながら隙間があり、そこから虫歯菌が入る余地があります。

また、人間の顎(あご)は本人の体重と同じくらいの力があり、たとえば体重50kgの人は、約50kgの力で噛んでいます。1日に噛む回数は平均600回とされていますから、「50kgの衝撃が1日600回かかる」ということです。たとえ金属でつくられているにしても、詰め物・かぶせ物は次第に変形していくはずです。もちろん、接着部分のセメントもはがれてくるでしょう。

以上の理由から、噛んでいるうちに、「歯と補綴物の隙間」は拡大していきます。隙間が大きくなれば、どんどん虫歯菌は入りこみやすくなります。虫歯菌が銀歯の裏側へと侵入したら、もう二次カリエスを止めることはできません。ある日、銀歯の奥が痛みだしたり、詰め物が取れたりして、虫歯の再発に気づきます。

1-3 詰め物・かぶせ物の精度が低いと二次カリエスに…!

初回の治療で補綴物を入れたとき、補綴物の精度が低いと二次カリエスのリスクが上昇します。歯と補綴物に隙間があれば虫歯菌が入りこみます。また、舌で触ったときに段差があると、段差の周辺で虫歯菌が増殖します。

隙間・段差に歯垢が溜まり、虫歯菌が増殖すると、そこから虫歯が再発するリスクがあります。虫歯はやがて「歯と補綴物の隙間」を掘り進むように悪化し、銀歯の裏側まで到達するわけです。

1-4 虫歯の取り残しがあると、二次カリエスに…!

初回の治療ですべての虫歯が取り切れていないと、銀歯の奥で虫歯が再発する恐れがあります。「虫歯を取り残すことなんてあるの…?」と思うかもしれませんが、深い虫歯の場合、虫歯を全部取りのぞくのは容易ではありません。

神経まで達するような深い虫歯には、「神経を抜いて、歯の内部を無菌化する処置」をおこないます。「歯の内部」には根っこ部分に通じる細い管(根管)も含まれます。この処置を「根管治療」と呼びます。根管はいくつも枝分かれしている上、曲がりくねっていることもあり、複雑な構造です。根管内の虫歯を100%取りのぞくのは容易ではありません。

根管治療では「ファイル」「リーマー」といった針状の器具を使い、根管内部を削っていきます。虫歯を取りのぞいたら、枝分かれした複数の根管を1つにまとめて、内部に薬剤を詰めます。虫歯菌が入らないように、殺菌・消毒作用のある薬剤を詰めこむわけです。

ただ、根管は非常に入りくんでいます。細い根管の虫歯を取り残すこともあれば、薬剤が十分に詰まっていないこともあります。そのため、どうしても一定の確率で虫歯が再発してしまいます。

二次カリエスによる再治療を繰り返すと、最終的には抜歯に至る例もあります。可能であれば、神経を抜かずに済む初期虫歯のうちに受診するのがよいでしょう。根管治療に至らない小さな虫歯は、再発リスクも低くなります。

2.歯を失うリスクも…!二次カリエスを予防する方法

神経が残っている歯なら、二次カリエスになると痛みを生じます。痛みを感じてからすぐに歯医者さんを受診すれば、少なくとも歯を失うことはないでしょう。再治療を受ければ、歯を保存できるはずです。ただ、二次カリエスを繰り返せば、いずれは神経を抜くことになります。

さて、神経を抜いた歯の場合、事態はもっと深刻になります。銀歯の裏で何が起きても、痛みを感じることはありません。当然、銀歯の奥で進行している以上、歯の表面に穴が開くこともありません。虫歯の再発に気づくことは非常に困難です。最悪の場合、「気づかないうちに根の部分まで感染する」という経過をたどります。このレベルの二次カリエスを何度か繰り返すと、最終的には抜歯に至ります。

つまり、二次カリエスは「神経が生きている歯の神経を死に追いやり、神経を抜いた歯を抜歯に追いこむ恐れがある」ということになります。二次カリエスを繰り返すことは、歯を失うことに直結するわけです。将来的に自分の歯を残していくためには、「いかに二次カリエスを防ぐか」という観点で虫歯予防をしなければなりません。では、二次カリエスを予防するために、私たちには何ができるのでしょうか?

2-1 治療済みの歯のプラークコントロール!

詰め物・かぶせ物を入れた歯は、「歯と補綴物の隙間」から虫歯菌が入りやすくなっています。そのため、毎日のブラッシングでは、念入りに歯垢を除去したほうが良いでしょう。歯ブラシによるブラッシングに加え、ワンタフトブラシで補綴物の周囲を磨くなど、「歯と補綴物の隙間に歯垢を溜めない工夫」をしてください。

ちなみに、ワンタフトブラシというのは、普通の歯ブラシよりヘッドが小さく、一点をしっかり磨くためにつくられたブラシです。

2-2 フッ素を使用した虫歯予防を取り入れる!

フッ素には、歯のエナメル質を強化して虫歯リスクを下げる作用があります。歯医者さんでは予防処置として「フッ素塗布」がおこなわれていますし、家庭用にはフッ素配合の歯磨き粉が市販されています。また、最近はOTC医薬品として「フッ素洗口液」も市販されるようになりました。

2-3 深い虫歯の場合、精密な根管治療を受ける!

神経を抜く治療が必要になった場合、「再発リスクを下げるための精密な根管治療」を受けることも可能です。基本は自由診療なので費用は高額になりますが、保険適用外の器具を使って、再発リスクの低い治療をおこなってもらえます。精密根管治療で使われる主な器具は、以下のようなものです。

ラバーダム

「ラバーダム」は薄いゴム製のシートです。根管治療のとき、「ラバーダムで治療する歯の周囲を覆う」という行程を加えると、二次カリエスのリスクが減少します。周りを覆ってしまえば、治療中の歯を周囲から独立させることができます。治療中の歯に唾液・細菌が入らないので、「歯の内部に虫歯菌が残存するリスク」が減るわけです。

マイクロスコープ

「マイクロスコープ」は歯科用の実体顕微鏡です。根管は非常に細く、入り組んだ構造なので、肉眼で内部を確認することはできません。そのため、ほとんどの歯医者さんは手探りで根管治療をおこなっています。しかし、顕微鏡を使えば、根管内部を目視確認して治療することが可能です。実際に歯の内部を見ながら治療するわけですから、虫歯の取り残しは減るはずです。そのぶん、再発リスクは小さくなるでしょう。

3.まとめ

日本人は80歳になると、自分の歯が10~15本しか残っていないのが普通です。少しでも自分の歯をたくさん残せるように、厚生労働省・日本歯科医師会は「80歳で20本の歯を残す8020運動」をかかげていますが、まだまだ実現には遠い状況です。1本でも多く歯を残すために「二次カリエスの予防」を心がけましょう。

 

先生からのコメント

虫歯で歯を削った箇所が二次カリエス(再発)になり、神経を抜いてしまう。神経を抜いた歯は、樹木に例えると枯れ木です。悪化すると最後は抜歯して、入れ歯を入れることになります。そうならないように、歯をなるべく削らず神経を残す方向で、早期発見に努めたいですね!

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執筆者:歯の教科書 編集部

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