ドライソケットの治療法・原因を解説!抜歯後の注意点まとめ

抜歯した部分の傷口がうまく塞がらず、ときに激しい痛みを引き起こすことがあります。このように「歯茎に大きな穴があいた状態」を「ドライソケット」と呼んでいます。親知らずを抜歯した箇所がドライソケットになることも多く、抜歯前から「ドライソケットになったらどうしよう…」と考えこんでいる方も少なくありません。

そこで、こちらの記事では「ドライソケットの原因」「ドライソケットの一般的な治療法」などをまとめることにしました。ぜひ、参考にしてください。

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この記事の目次

1.ドライソケットの一般的な治療法を解説!

まず、ドライソケットとは「抜歯した傷跡がきちんと塞がらない状態」を指す言葉です。正式名称では「抜歯窩治癒不全(ばっしかちゆふぜん)」と呼んでいます。「抜歯窩」は「歯を抜いた傷跡」、「治癒不全」は「治りが悪いこと」なので、難しい言葉ではありますが、読んで字のごとく…の意味合いです。

1-1 そもそも、ドライソケットとは?

抜歯をした傷口は「血餅(けっぺい)」で覆われます。血餅は「血液がゼリー状になった塊(かたまり)」です。止血・治癒を促すもので、「かさぶた」と同じような役割を担っています。しかし、何らかの原因で血餅が形成されなかったり、外れたりすると、「抜歯した穴」がむき出しになります。この「むき出しになった穴」がドライソケットです。

ドライソケットになる確率はそれほど高いものではありません。しかし、下顎の親知らずを抜歯した場合、やや高い確率でドライソケットを生じます。

1-2 ドライソケットはどんなふうに治療する?

ドライソケットは痛みを伴いますし、痛みが引いたあとも穴が残って不便を感じます。特に食事のときには、「ドライソケット内にご飯が入って不快に感じる」などの問題が起こりがちです。

中には「ずっと歯茎に穴があいたままなのでは…」と心配している方もいらっしゃるでしょう。そこで、この章では「ドライソケットの一般的な治療法」を解説したいと思います。

1-3 鎮痛剤・抗生剤の服用&経過観察で自然修復を待つ方法

結論からいうと、ほとんどの場合、ドライソケットは自然に修復します。2~3か月で見た目にはだいたい平坦になり、7か月くらい経つころには骨が再形成されます。ただ、窪みが大きい場合はきちんとした平坦にはならず、多少の凹みが残ることもあります。

そのため、痛みが出ている間は鎮痛剤で痛みを抑え、感染防止に抗生剤を服用しながら経過観察する…というのが第一選択になるでしょう。

1-4 抗生剤の外用薬を患部に詰める方法

鎮痛剤・抗生剤の内服と並行しておこなうことが多い治療法です。抗生剤の軟膏・クリームをガーゼにしみこませ、抜歯の傷跡に詰めます。「骨への感染を防ぐ」という部分を重視した治療法です。

1-5 抜歯窩再掻把(ばっしかさいそうは)で、外科的に治療する方法

局所麻酔をおこない、ドライソケット内部に傷をつける方法です。もう一回出血させて、血餅の形成を促す治療になります。ただし、この方法が採用されることはあまり多くありません。「自然治癒が期待できるものを、あえて傷つける必要は感じない」という歯科医師が多いためでしょう。

2.ドライソケットになると、どんな症状が起こる?

歯は「歯槽骨(しそうこつ)」という骨を土台にしています。そして、ドライソケットは「傷が塞がっていない状態」です。つまり、歯が抜けた穴がむき出しになっているということは、「歯槽骨がむき出しになった状態」を意味します。

2-1 ドライソケットは激痛を伴う!?悪化すると炎症を起こすことも…

「骨までむき出しになった傷」は、当然、強い痛みの原因になります。普通なら抜歯後2~3日で痛みが治まりますが、ドライソケットの場合は逆で、むしろ痛みが強くなっていきます。強い痛みは1~2週間、長引く場合は1か月ほど継続することもあります。

また、決して高い確率ではありませんが、「むき出しになった骨が細菌に感染するリスク」があります。骨が炎症を起こすと「骨炎(こつえん)」を起こす場合があり、悪化すると骨壊死(こつえし)などの症状に発展することもあり得ます。

2-2 ドライソケットの原因は何?

ドライソケットには、2つのパターンが存在します。1つは「そもそも、血餅が形成されなかった場合」で、もう1つは「血餅が形成されたが、外れてしまった場合」です。それぞれのパターンごとに原因は異なります。

血餅が形成されなかったケース

最初から血餅が形成されない場合、たいていは「出血量が多すぎるか、少なすぎるか」のどちらかです。出血が多すぎれば血が固まらずに血餅が形成されませんし、少なすぎれば血餅の材料になる血液が足りません。

出血量が多すぎる理由としては、抜歯後の飲酒・入浴・激しい運動などがあげられます。血流が増すと、出血が増えてうまく固まらないことがあるからです。

また、女性の場合、経口避妊薬(ピル)を服用していると出血量が増える場合があります。主成分―エストロゲンには血管を拡張し、血流を増やす作用があるからです。そのほか、血液をサラサラにするための薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を服用している人も、血が固まりにくくなるので血餅を形成しづらくなります。

出血量が足りなくなる理由としては、抜歯直後の喫煙があげられます。タバコに含まれるニコチンには血管収縮作用があり、出血量の減少で血餅がつくられなくなる恐れがあります。そのほか、麻酔薬に含まれる血管収縮剤が影響するケースも考えられます。複雑な抜歯で麻酔薬をたくさん使った場合などは、血管収縮による出血量減少で血餅が形成されない…というケースがあり得るでしょう。

血餅が外れてしまったケース

血餅が外れるのは、基本的に物理的な要因です。傷口を気にして舌でいじりすぎたり、吸い出すような動作をしたりすれば、血餅が外れる恐れがあります。また、「傷口に歯ブラシをあてる」「うがいをしすぎる」なども、血餅が外れる原因になります。特に抜歯当日は、抜歯した部位に力を加えないように注意してください。

3.まとめ

ドライソケットは強い痛みを伴うこともあります。「抜歯後の飲酒・喫煙・運動を控える」といった基本的な注意事項を守るだけでもリスクは下がりますから、歯医者さんで説明された「抜歯後の注意事項」をきちんと守るようにしましょう。

また、基本的には自然治癒するものですから必要以上に心配することはありません。歯医者さんと相談しながら対応するようにしてください。

経歴

出身校(最終学歴): 北海道医療大学 歯学部
歯科医暦:24年目
歯科医を目指したきっかけ:父親が歯科医で、背中を見て歯科医になろうと思った。

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。