虫歯による激痛が起きた時、すぐに歯医者さんに行けるとは限りませんよね。では歯医者さんに行くまでの間、どのように対処すれば良いのでしょうか。痛みを和らげる応急処置や、歯が痛い時にしてはいけないこと、症状別の治療法などを紹介していきます。
また、激痛の原因は虫歯でない場合もあります。その場合、どのような症状が起きるのか?何科にかかればいいのか?などについても説明していきます。
この記事の目次
1.虫歯による激痛を鎮める応急処置
歯が痛くてもすぐに歯医者さんに行けない場合、できるだけ速やかに応急処置を行いましょう。ここでは、鎮痛剤を飲む・患部を冷やす・食べカスを除去する・虫歯に効くツボを押す、4つの方法を紹介しています。
1-1 鎮痛剤を飲む
最近は、歯科で痛み止めとして処方される「ロキソニン」に近い効果が期待できる「ロキソニンS」を薬剤師のいる薬局などで買うことができます。効き目が現れるのが早いと言われ、眠くなる成分が入っていないのも嬉しいです。
胃に優しいタイプの「ロキソニンSプラス」や「バファリン」などでも良いですし、液体カプセルの「リングルアイビー」も働きが早く出るのと言われています。
個人差はありますが、服用してから大体20~30分で効きはじめてくると言われています。
1-2 患部を冷やす
歯髄(歯の神経)の血流が増え、神経が圧迫されることで痛みを伴うので、冷やしたタオルを当て、血流を抑えてあげることで痛みを和らげることが期待できます。
ただし、冷やしすぎるのも逆効果なので、様子を見ながら行ってください。また、軽度の虫歯の場合、冷やすことで却って痛みが増す可能性もあるので注意が必要です。
痛みが落ち着き次第、速やかに歯医者さんへ行くことをおすすめします。
1-3食べカスがあれば除去する
気付かないうちに進行した虫歯の穴に食べカスが詰まり、歯茎と歯の隙間に食べカスが挟まってしまうと激痛が起きます。
虫歯の穴に食べカスが詰まっている時は、患部に触れないように注意しながら取り除いてください。万が一触れてしまうと、穴が開くほどに進行した虫歯ですから、神経に触れてしまう恐れがあります。そうすると、更に激痛を引き起こしてしまいます。
歯茎と歯の間や、歯と歯の間に挟まって歯茎を圧迫して痛い場合は、フロスを使って除去することをおすすめします。歯茎にカスが付着しているだけでも、接触している部分が炎症を起こしてしまう体質の人もいます。
虫歯予防に限らず、あらゆる点で食べカスを除去しておくことは大事なことなのです。
1-4 虫歯に効くツボを押す
合谷(ごうこく)
歯痛だけでなく、色々な症状に効くとされるツボです。親指と人差し指の付け根の間にあります。痛いと感じるくらい強く押して揉むのがコツです。束ねた爪楊枝の背で軽く刺激すると効果があります。出血しない程度の強さで行ってください。
歯痛点(しつうてん)
合谷を刺激しても効果を感じられない時は、手のひらの中指と薬指の付け根の間にある「歯痛点」を試してみてください。虫歯による痛みに有効であると言われています。親指と人差し指で挟み、合谷と同様、痛いと感じるくらい強めに押すのがポイントです。左右交互に何度か行うと効果的です。
ただし、これらはあくまでも応急処置です。夜間などの急な痛みの際には非常に助かるはずですが、虫歯が治るわけではないので、できるだけ早く歯医者さんへ行ってください。
2.虫歯が激しく痛むときにやってはいけないこと
2-1 患部を触る
押してしまうと刺激になりますから、ただでさえ痛いものが更に酷い痛みになります。舌で触るのもやめましょう。
穴に詰まった食べカスを除去する際や歯磨きの際は、細心の注意をはらって、できるだけ刺激を与えないように気を付けてください。
また、刺激を与えないということだけでなく、手に付いた雑菌が患部に入り込み、悪化させるのを防ぐ意味もあります。
2-2 お酒を飲む
酔うと痛みの感じ方が鈍くなるので、一見、効いていると思ってしまいそうですが、やってはいけないことです。
しかも歯髄(歯の神経)の血行が良くなると患部を圧迫するため、痛みを強く感じるようになり余計辛いだけです。
また、飲酒後に鎮痛剤を飲むと副作用が出る場合があるので、服用するのは絶対にやめておきましょう。
2-3 身体を温める
こちらも飲酒と同様に血行が良くなってしまうので、痛みを悪化させてしまいます。入浴は避けた方が良いでしょう。どうしても入りたい時は、シャワーで手短に済ませるようにしましょう。
また、運動も血行促進につながりますので避けた方が良いでしょう。汗をかくようなことは、基本的に避けなければなりません。
2-4 煙草を吸う
アルコールと同じように、歯の痛みを刺激する成分が含まれています。痛みが酷くなってしまうのでやめましょう。
虫歯ではなく抜歯した後も、歯医者さんからは喫煙を止められるはずです。
痛みがない場合でも、煙草は歯周病の原因にもなるので、喫煙に対しては注意が必要です。
3.激痛を引き起こすさまざまな可能性
3-1虫歯(歯髄炎)
虫歯菌が歯髄(歯の神経や血管)にまで到達してしまった重症の虫歯です。歯髄が炎症を起こし、神経を圧迫してしまうため激しい痛みを伴います。
まれに他の部位の細菌が血液により運ばれ、虫歯でないのに歯髄炎を起こす事例もあります。
また、歯ぎしりや食いしばり、ぶつけるなどの外的刺激、歯科治療の際の薬剤での刺激によって起きることもあります。
3-2 歯の根に膿みが溜まっている(根尖性歯周炎)
神経を取った歯、もしくは自然と神経が死んでしまった歯で起こります。健康な歯では起きません。
神経を取った後の場所で細菌が繁殖したために、身体が反応し、細菌を食い止めるために膿の袋ができるのです。もともとあるはずのものではないですから、歯茎や歯が圧迫され酷い痛みが生じます。
食べ物を噛んだ時や何もしていなくても激しく痛み、歯茎から膿が出るなどの症状があります。
歯茎が痛い場合
主に歯垢が原因で歯茎が炎症を起こし、重症化すると歯が抜け落ちてしまう病気です。
初めは歯茎が腫れたり出血したりします。進行すると、歯茎が下がることで、歯が伸びたように見え、隣の歯との間に隙間が生じます(ブラックトライアングル)。
更に進行すると、歯を支えきれずにぐらぐらし始めます。ここまでくると、歯を支えている歯槽骨の大部分は溶けてしまっており、尋常ではない痛みがあります。最悪の場合には抜けてしまうこともあります。
歯茎に痛みを感じるときは、他にも、ウイルス性の歯肉炎や放射性治療後の副作用による口内炎も挙げられます。
3-3 身体の不調が原因となるケース
副鼻腔炎
副鼻腔が炎症を起こし、鼻水や鼻づまりなどの症状を引き起こす副鼻腔炎は、歯痛と間違えやすい病気です。副鼻腔は眉間から上顎にまであり、そこに膿が溜まるので頭痛や歯痛と混同しやすいのです。
筋・筋膜性歯痛
上下の奥歯に鈍痛を生じることが多く、顎を動かす筋肉が筋肉痛を起こすことにより発症します。筋肉にしこり(トリガーポイント)ができて、そこを押すとやがて歯痛が生じます。
神経障害性歯痛
顔の神経を司る三叉神経や帯状疱疹性歯痛などでも、激しい歯痛が生じます。瞬間的に刺すような痛みが走ったり、一日中絶え間なくピリピリとした痛みが続いたりします。
その他
片頭痛、心筋梗塞、うつなどでも歯痛を伴うものがあります。命に関わる恐れもあるので、素人判断をせず、きちんと専門医へかかって原因を突き止めてください。
4.歯医者さんで行う治療法
4-1 虫歯(歯髄炎)の場合
歯髄を残せる場合
比較的軽度であれば、歯髄を残す治療を行うことができます。歯髄を取り除くと歯がもろくなって欠けてしまい、後々抜けてしまうこともあるので、できることならこの段階で治療したいところです。
虫歯部分を除去し、薬剤を詰めて仮の被せ物で保護して数ヶ月様子を見ます。炎症が落ち着いたら正式に詰め物や被せ物をして、治療は完了です。
歯髄を残せない場合
残念ながら症状がある程度進行してしまっている時には、歯髄を除去しなければなりません。抜髄(歯髄を除去すること)をし、その部分に薬剤を詰める根管治療を施します。こちらも炎症が落ち着いてから、詰め物や被せ物をして治療は完了です。
抜歯しなければならない場合
虫歯が重症化すると歯を残すことができず、抜歯することになります。抜いたままにしておくことはできませんから、インプラントやブリッジ、入れ歯などの処置をする必要があります。
4-2 歯の根に膿が溜まっている場合
根管治療のやり直しをすることで、大抵治ります。それでも治らない時は、嚢胞(膿み)の摘出手術を行います。
4-3 歯周病の場合
初期段階であれば、プラークコントロールが正しく行われることで食い止められます。歯がぐらついて抜けてしまうような重度の歯周病の場合には、外科手術が必要になります。
フラップ手術
歯茎を切開して歯垢や歯石を除去し、再び歯茎を縫合します。
歯周組織再生療法
歯槽骨が溶かされてしまった場合に行います。再生した後、そこにインプラントや入れ歯などを入れます。
5.まとめ
激しい痛みを伴う虫歯は重症化していることが多く、治療も大掛かりになりがちです。自身の身体だけでなく、精神的、金銭的にも大きな負担となります。重症化させないことが大事です。そのためには、日々のお手入れと定期的なメンテナンスを心掛けましょう。
目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。
松本歯科大学卒業後、同病院勤務。
琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて
顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。
その後都内複数歯科医院勤務後、
麻布シティデンタルクリニックを開院。
現在に至る。
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。