歯が溶ける原因は“酸”だった!予防と対策おしえます

歯が溶ける原因は“酸”だった!予防と対策おしえます

歯は溶けることがあるのを知っていますか?

歯が溶けると穴が開いたり薄くなったりし、冷たい飲み物がしみるといった症状が出ることがあります。放置して神経が刺激を受けるほどになると、耐えがたい痛みが生じることもあります。

この記事では、歯が溶ける原因の酸について解説するとともに、すぐにできる食事対策と注意点、歯が溶けてしまう病気と治療法などを紹介しています。

歯の健康に不安がある人、歯が溶けているかどうか心配な人はぜひ参考にして、正しいケアや歯医者さんでの定期健診といった対処につなげていきましょう。

この記事の目次

1.歯が溶ける原因は酸

歯が溶けるのは酸が原因です。
歯を溶かす酸には「食べ物や飲み物の酸」と「虫歯菌が作る酸」「胃液に含まれる酸」などがあります。

1-1 食べ物や飲み物の酸

食べ物や飲み物に含まれる酸は、飲食することで歯に付着します。

口の中は基本的に中性を保っていますが、飲食によって一時的に酸性に傾きます。
歯の表面のエナメル質(※)は、鉄よりも硬い物質ですが酸には弱い性質をしています。
そのため、酸が歯に長く留まることで、エナメル質を少しずつ溶かしてしまいます。

唾液には、口の中の酸を中和して中性に近づける働きや、エナメル質から溶け出したカルシウム、リンといったミネラル成分を補って歯を修復してくれる働きがあります。

しかし、飲食後の歯磨きを忘れたり、磨き残しが多かったり、飲食の回数自体が多かったりすると、唾液のそうした作用が間に合わず、歯が溶け出してしまうことがあります。

※歯は、表面からエナメル質、象牙質(ぞうげしつ)、歯髄(しずい)という3層構造になっています。象牙質はエナメル質よりもやわらかい性質です。そのため、象牙質が露出した歯は、溶けやすい状態になっていると言えます。

1-2 虫歯菌が作る酸

虫歯菌は、歯に付着した糖分を栄養にして増殖し、「歯垢(しこう=プラーク)」と呼ばれる細菌の集合体を作ります。
歯垢の中では、虫歯菌が糖分を材料に酸を作り出しています。

歯垢には粘着性があるため、唾液ではきれいに除去できません。
歯磨きで落とせなかった歯垢があると、虫歯菌は増え続け、どんどん酸を作り出していきます。

その結果、歯垢に覆われた歯のエナメル質から徐々に溶かされていくことになります。

1-3 胃液が歯を溶かすことも

逆流性食道炎(※)や嘔吐を繰り返している状態では、胃液に含まれる酸が歯に付着しやすくなります。

胃液が長時間歯に付着したままだと、エナメル質が溶けてしまうことがあります。
これは、胃液の主な成分である塩酸が、強い酸性であるためです。

※胃の内容物や胃液が胃から食道を逆流してしまう病気です。酸っぱいものがこみ上げてくる、胸やけがするといった症状があらわれます。

2.酸性度が高い食品とは

水素イオン濃度を示す「pH値」という指標があります。
pH6.0~8.0未満が中性、それよりも低ければ酸性、高ければアルカリ性となります。

エナメル質が溶け始めるとされるのは「pH5.5以下」です。
なお、胃液に含まれる酸はpH1.0~2.0であることから、非常に強い酸性ということが分かります。

酸性アルカリ性

2-1 酸性度が高い食べ物や飲み物

pH5.5以下の歯が溶けやすいとされる食べ物や飲み物には、次のようなものがあります。

pH5.5以下の食べ物pH5.5以下の飲み物
レモン
ピクルス
みかん
グレープフルーツ
りんご
酢の物
酢を使ったドレッシング など
炭酸飲料
スポーツドリンク
ワイン
酎ハイ
ビール
黒酢
栄養ドリンク など

※pH値が示す「酸性」は、「すっぱさ」でイメージされる「酸性」とは別の基準です。すっぱくなくてもpH値が低い(歯が溶けやすい)食品もあれば、すっぱいのにpH値が高い(歯が溶けにくい)食品もあります。

3.すぐにできる食事対策と注意点

3-1 だらだら食べたり飲んだりしない

間食する時間を決めておき、それ以外の時間に食べたり飲んだりするのを控えるようにしましょう。
また、飲食したあとは歯磨きやうがいで、口の中の汚れを落とす習慣をつけましょう。

だらだらと食べたり飲んだりすると、その間、口の中が酸性に傾いたままになります。
歯が酸にさらされる時間が長くなるため、歯が溶けやすい環境になってしまいます。

3-2 就寝前に飲食しない

就寝前の歯磨きをしたあとは、飲食しないよう心がけましょう。

就寝中は唾液の分泌量が減るため、口の中が乾燥して虫歯菌が増殖しやすくなります。
唾液が口の中の汚れを洗い流したり、歯の表面を修復したりする働きも弱まるため、歯が溶けやすい環境になっています。

3-3 ガムを噛む

食事や間食のあとにガムを噛むことは、酸が作られるのを防ぐ、口の中の汚れを落とす、といった点で有用です。
ガムは唾液の分泌を促してくれるためです。

ただし、糖質が多く含まれているものは、虫歯菌が酸を作り出すきっかけになってしまうことがあるため、注意が必要です。
ノンシュガーのものや、キシリトールが配合されているものを選びましょう。

3-4 ストローで飲み物を飲む

ストローで飲み物を飲むことで、その飲み物が歯に触れる量や時間を減らすことができます。
炭酸飲料やスポーツドリンクといった酸性の飲み物を飲む際は、ストローを使ってできるだけ歯に触れないようにするといった工夫を取り入れるのも良いでしょう。

また、飲み物を飲む際は口の中に溜めないように心がけましょう。

3-5 うがいを習慣づける

仕事中や出先といった状況では、食事や間食のあとすぐに歯磨きできないことが少なくありません。
その場合、うがいをするだけでも口の中の汚れをある程度落とすことができます。

併せて、可能であればシュガーレスのガムやキシリトール配合のガムを噛み、唾液の分泌を促すと良いでしょう。

3-6 基本的な食事であれば酸性の食品を過度に避ける必要はない

酸は飲食を通して歯に付着しますが、だからといって酸性の食品を過度に避ける必要はありません。
基本的な食事量であれば、唾液が口の中を中和してくれたり、酸によってダメージを受けた歯を修復してくれたりするからです。
さらに、食事のあとにうがいや歯磨きをして、歯に付着した酸や食べカスといった汚れをしっかり落とす習慣があれば、心配しすぎる必要はありません。

しかし、酸性の食べ物ばかりを大量に食べている、長時間食べ続けている、といった場合は注意が必要です。
唾液の作用が間に合わなくなり、口の中が酸性に傾いたままになってしまうことが考えられるためです。

4.歯が溶ける病気「酸蝕歯(さんしょくし)」

4-1 酸蝕歯は第三の歯科疾患

酸蝕歯は、虫歯と歯周病に次ぐ第三の歯科疾患と言われています。
歯科疾患とは、歯の寿命を縮めてしまう代表的な病気です。

虫歯と同じ「歯が溶ける」病気ですが、虫歯の原因が細菌であるのに対し、酸蝕歯は酸そのものが原因のため区別されています。
日本人のおおよそ4人に1人は酸蝕歯にかかっている、という調査結果もあります。

酸蝕歯は、時間をかけてゆるやかに進行するため、大人になってから症状に気づく人が多いようです。
そのため、大人がかかる病気だと思われがちです。

しかし、実際には子どもの頃の飲食や歯磨きといった習慣が原因で酸蝕歯になり、大人になるまでの間に徐々に進行していくケースもあると考えられています。

子どものうちから酸性の食べ物や飲み物ばかりを取ることは控え、飲食したあとは歯磨きやうがいの習慣をつけておくことで、酸蝕歯のリスクを減らしていきましょう。

4-2 歯磨きで酸蝕歯対策

食後の口の中は酸性に傾いており、歯の表面がやわらかい状態になっています。
その状態で歯を磨くことは酸蝕歯の症状が進行する恐れがあるため、食後30分以内に歯磨きしない方がよいといった意見があります。

しかし、食後30分以内に歯磨きをしないとプラークの成熟を助けることになり、酸性度を高め、虫歯のリスクを増やしてしまうという捉え方もあります。

できるだけ早く口の中の酸を除去するために、食後は30分以内に歯を磨くようにしましょう。
特に子どもの歯磨きは、歯垢を除去し虫歯を防ぐことが大きな目的のため、食事のあとはできるだけ早く歯磨きすることが望ましいといえます。

自分が酸蝕歯かどうか、食後どのタイミングで歯磨きをするかなど注意点は、歯医者さんに確認しましょう。

4-3 酸蝕歯の治療法

虫歯ではないため、症状がない場合は基本的にフッ素塗布などを行い、溶けてしまった歯を強化するようにしていきます。

歯がとてもしみてしまったり痛みを生じたりしているような場合、詰め物や被せ物をするという治療があります。
深く穴が開いており、神経が刺激を受けてうずくほどの痛みがあるといった場合は、歯髄(しずい=歯の神経部分)の治療をすることもあります。

ただし、歯医者さんで治療をしても、原因を改善しなければ酸蝕歯が再発したり進行したりしてしまう恐れがあります。

酸性の強い食べ物や飲み物を日常的に摂取する、口内環境を不衛生なままにする、といった習慣がある人は、歯医者さんを受診する機会に改善するよう心がけましょう。

5.まとめ

歯が溶ける主な原因は、食べ物や飲み物に含まれる酸、虫歯菌が作り出す酸といったものがあります。
飲食をしたあとは、うがいや歯磨きで口の中の汚れをしっかり落とすことが大切です。

歯磨きの仕方に不安がある人は、歯医者さんを受診して正しい歯磨きの方法を指導してもうことをおすすめします。

また、歯医者さんで定期健診を受けることで、酸蝕歯や虫歯といった病気を早期発見できる場合があります。
この機会に、かかりつけの歯医者さんを作ってみてはいかがでしょうか?

プロフィール&経歴

血液型:B型

誕生日:1978-09-07

出身地:千葉県

趣味・特技:映画鑑賞、読書、勉強(歯科医療関係)

座右の銘:一意専心

好きな食べ物:唐揚げ(唐揚げニスト)、ハンバーガー、ステーキ

2003年 明海大学歯学部 卒業
2005年 すまいる歯科 分院長就任
2008年 あすか歯科クリニック 分院長就任
2012年 東葉デンタルオフィス 開院
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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