デンタルフロスは、使い方を知っているようで何となく自己流で使っている、という人も多いのではないでしょうか?デンタルフロスには、効率よく汚れを落とすための正しい使い方があります。この記事では、糸巻きタイプとホルダータイプのデンタルフロスの正しい使い方を、分かりやすく図解しています。デンタルフロスが初めての人にも、すでに使い慣れている人にも参考になる内容です。この機会に正しい使い方を身につけ、トラブルの予防につなげましょう。デンタルフロスを用いたケアは、厚生労働省(※1)をはじめ、日本歯科医師会(※2)や綜合健康推進保健協会(※3)といったように、さまざまな機関や団体が推奨しています。
※1【参考】 厚生労働省 e-ヘルスネット 歯間部清掃(デンタルフロス・歯間ブラシ)
※2【参考】 日本歯科医師会 歯の学校2018年5月 Vol.66
※3【参考】 綜合健康促進保健協会 口腔衛生補助道具の使い方
この記事の目次
1.糸巻きタイプ
1-1 下準備
デンタルフロスを使用する前に、手を清潔にしておきましょう。
フロスが引っかかることもがあるため、爪が切りそろっているかチェックすることをおすすめします。
糸巻きタイプは、使う分だけ切る必要があります。
1回分の長さは、指先から肘までの長さ(約40cm前後)を目安にしましょう。
切ったデンタルフロスを、片方の中指(※)に2~3回巻きつけます。
※日本歯科医師会が作成した指導マニュアルでは中指に巻き付けることを基本としていますが、人差し指に巻き付けても問題ありません。より掃除しやすい・磨き残しが少なくなる方の指でおこないましょう。
もう片方の中指に、残りの部分を外れないように巻きつけます。
巻きつけた指同士の間隔が、10~15cm程度になるように調節します。
女性の場合は10cm程度がおすすめです。
両手の親指と人さし指でデンタルフロスをつまみ、ピンと張ります。
このとき、左右の親指は1~2cm程度離すようにしましょう。
1-2 持ち方
糸巻きタイプは、上下の前歯と奥歯で糸の持ち方が変わります。
・上の前歯
・上の奥歯
・下の前歯と奥歯
の順に図解していきます。
初めはやりにくいかもしれませんが、毎日使うことで慣れていきます。
正しい持ち方を身につけましょう。
【上の前歯】
親指と人さし指で図のように支え、デンタルフロスが上に向くように固定します。
【上の奥歯】
両手の人さし指で図のように支え、デンタルフロスが上に向くように固定します。
【下の前歯と奥歯】
両手の人さし指で図のように持ち、デンタルフロスが下を向くように固定します。
1-3 入れ方
歯と歯の間に入れるコツを図解します。
入れるときは次の点に注意しましょう。
- 力まかせに入れない(歯茎を傷つけることがあります)
- デンタルフロスをしっかり張る(たるむと十分な効果が得られにくくなります)
【上の歯と歯の間】
図を参考に、一方の指を歯の外側に、もう一方の指を歯の内側にくるように構えます。
前後に動かしながら(歯の外側⇔歯の内側に交互に引っ張りながら)、歯と歯の間を滑らせるようにして入れていきます。
歯茎のところまで、ゆっくり引き上げます。
【下の歯と歯の間】
上下が変わっただけで、構え方や入れ方は上の歯と同じです。
歯茎のところまで、ゆっくり引き下げます。
1-4 動かし方と抜き方
実際に汚れを除去していきます。
動かすときも抜くときも、共通しているのは「ゆっくり優しく動かす」という点です。
力が強すぎたり早く動かしたりすると、十分な効果が得られにくくなります。
歯茎を傷つけてしまう原因にもなるため、注意しましょう。
【動かし方】
歯に引っかけるようにして、左右の手で交互に引き合いながら上下に動かします。
一方の歯の側面を掃除したら、もう一方の歯の側面も同じ動作で掃除します。
【抜き方】
デンタルフロスを前後(左右)にゆっくり動かし、歯と歯の間を滑らせながら抜きましょう。
うまく抜けないこともありますが、力まかせに抜くことは裂けましょう。
歯が傷ついたり、被せ物や詰め物が取れたりしてしまうことも考えられるためです。
無理に抜こうとせず、片方の指からデンタルフロスをはずして、ゆっくりと前の方に引き抜きましょう。
1-5 次の歯に使うとき
次の歯を掃除するときは、使用した部分を少しずらして、新しい部分で同じ動作を繰り返します。
汚れが歯に付着してしまうため、一度使った部分は使わないように注意しましょう。
2.ホルダータイプ
2-1 下準備
ホルダータイプは下準備がいりません。
パッケージから出すだけですぐに使用できます。
デンタルフロスが初めての人は、ホルダータイプから使い始めても良いでしょう。
2-2 持ち方
図のように持ちます。
短く持ちすぎると動かしにくいため、適度な位置を見つけましょう。
2-3 入れ方
デンタルフロスを歯と歯の間に当てます。
前後にゆっくり滑らせるように動かして入れていきます。
このとき、力が強すぎたり早く動かし過ぎたりしないように気をつけましょう。
歯茎を傷つけてしまう恐れがあるためです。
2-4 動かし方と抜き方
【動かし方】
デンタルフロスを歯の側面に当て、前後にゆっくり滑らせながら上下に動かし、汚れを除去していきます。
もう一方の歯の側面も、同じように掃除します。
【抜き方】
デンタルフロスを前後にゆっくり動かしながら、歯と歯の間を滑らせるようにして抜きましょう。
2-5 次の歯に使うとき
ホルダータイプは、基本的に次の歯と歯の間にも使うことができます。
その場合は一度汚れを拭き取るか、水で洗い流すなどして、きれいにしてから使いましょう。
付着している汚れが多い場合や、血がついているといった場合は、新しいデンタルフロスを使うことも検討しましょう。
2-6 ホルダータイプ特有の注意点
糸巻きタイプは、片方の指に巻かれているデンタルフロスをほどくことで、抜きにくい場合も歯の前の方から引き抜くことができます。
一方、ホルダータイプは“ほどいて引き抜く”といったことができないものがほとんどです。
上の歯は下に向かって、下の歯は上に向かって抜くことになります。
ホルダータイプでは特に、歯と歯が接している「コンタクトポイント」を通すときに注意が必要です。
デンタルフロスの太さにもよりますが、コンタクトポイントを通すときに、きつく感じることがあります。
抜きにくい、きついと感じたときに力強く引き抜いたり、勢いよく引き抜いたりすると、コンタクトポイントが傷ついてしまうことがあります。
うまく抜けないからといって力を入れず、ゆっくり抜きましょう。
どうしても力を入れなければ抜けないときは、徐々に力を加えるように心がけましょう。
なお、糸巻きタイプ、ホルダータイプともに、入れるときはコンタクトポイントを通します。
このとき、力強く入れたり勢いよく入れたりすると歯茎を傷つけるリスクがあります。
ゆっくり入れて優しく動かすことを心がけましょう。
3.デンタルフロスでよくある疑問
3-1 デンタルフロスを使うタイミングは?
デンタルフロスは、一般的に歯磨きの後に使うことが推奨されています。
歯ブラシが、歯垢(しこう)を歯と歯の間に押し込むことがあるためです。
また、デンタルフロスを使うのは、夜の歯磨きの後がおすすめです。
寝ている間は唾液の分泌量が減るため口の中が乾燥し、細菌が増殖しやすい時間帯になるためです。
3-2 デンタルフロスが歯に引っかかった時は?
デンタルフロスが引っかかるという場合、コンタクトポイント以外に、被せ物や詰め物に何らかの不具合が生じていることが考えられます。
また、毎回同じ箇所で引っかかる場合は、虫歯ができている恐れもあります。
よく引っかかる、気になる引っかかり方をする、という人は、歯医者さんに相談することをおすすめします。
3-3 デンタフロスを使っている途中に出血しても大丈夫?
デンタルフロスを使っていて、歯茎から血が出ることがあります。
特に、デンタルフロスを使い始めた頃に血が出るケースが多いようです。
使うたびに血が出る、痛みを伴う、といった場合は、歯茎が炎症を起こしていることが考えられます。
症状が悪くなる前に、歯医者さんに相談しましょう。
3-4 デンタルフロスは使い捨て?
糸巻きタイプ、ホルダータイプを問わず、デンタルフロスは使い捨てです。
衛生上、毎日新しいものを使用するようにしてください。
3-5 デンタルフロスを使う、使わないでそんなに差があるの?
歯磨きに加えてデンタルフロスをおこなった場合、通常の歯磨きをしただけの場合と比べて、歯垢の除去率に大きな差が出ます。
歯垢除去率は、具体的にこのような差があります。
歯磨きだけでは、およそ40%の歯垢が取り切れていないことがわかります。
歯磨きだけの場合 | 糸巻きタイプを併用した場合 | ホールドタイプを併用した場合 |
62% | 95% | 91% |
【参考】日本歯科医師連盟 りぶるデンタルクリニック第17回 フロス始めませんか!
3-6 デンタルフロスの使いすぎで「すきっ歯」になるって本当?
デンタルフロスや糸ようじを使用したからと言って、歯と歯の間が開いたり、すきっ歯になったりすることはありません。(※)
歯の隙間に挟まっていた食べカスや歯垢が取れたことで、歯の間が広がったと感じることがあるようです。
4.デンタルフロスと歯間ブラシの違いに関して
歯間ブラシはデンタルフロスと似ていますが、効果や目的に違いがあります。
・デンタルフロス
主に歯と歯の間の汚れを取るために使います。
虫歯予防がメインのケア用品です。
・歯間ブラシ
主に歯と歯茎の間の汚れを取るために使います。
歯周病予防がメインのケア用品です。
歯間ブラシは、歯医者さんに勧められることもありますが、自分から使いたいと思ったときも、まずは歯医者さんに相談することをおすすめします。
自己判断では、歯間ブラシの選び方や使い方を誤ってしまう恐れがあるためです。
サイズが合わない歯間ブラシを使ったり、力加減を誤ったりすると、歯茎を傷つけてしまうことがあります。
そのため、まずは歯医者さんに相談して、歯や歯茎の状態に合った歯間ブラシを教えてもらいましょう。
5.まとめ
デンタルフロスは、正しく使って初めて、その高い歯垢除去効果を発揮します。
この記事で紹介した使い方をマスターし、予防につなげましょう。
『歯間ブラシとデンタルフロスの違い』について、歯医者さんの回答を見る
『正しい歯磨きとデンタルフロスの使い方』について、歯医者さんの回答を見る
2003年3月 東京歯科大学歯学部 卒業
2003年4月~2011年10月 東京歯科大学水道橋病院 勤務
2011年11月 まつもと歯科医院 開院
2015年4月~ 東京医薬専門学校 講師
現在に至る。
執筆者:
歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。