親知らずが虫歯になった~抜くか、残すか、判断基準を解説!

35,883view

生えてきたばかりの親知らずが、すぐに虫歯になってしまった…。親知らずは歯ブラシの届きにくい位置に生えてきますから、あっという間に虫歯になる例も珍しくありません。

実際のところ、親知らずは世間一般で「口腔トラブルの元凶」という扱いを受けており、「虫歯になった親知らずは抜歯対象」と考えている人が多いです。

しかし、「虫歯になった親知らずは、すべて抜歯するべき」とまで断言できるのでしょうか? 中には、虫歯治療をして保存するべき症例も存在するのではないか…。そんなふうに考えたことはありませんか? こちらの記事では「虫歯になった親知らず」の処遇について、さまざまな観点からまとめることにしました。

1.親知らずが虫歯になった…!保存する意味はある?

虫歯になった親知らずをわざわざ治療する…というからには、「親知らずを保存するメリット」を提示しなければいけません。親知らずを残しておくことで、いったい、どのようなメリットを享受できるのでしょうか?

1-1 第二大臼歯を失ったとき、ブリッジの支台にできる!

抜歯に至った歯を補う治療の1つに「ブリッジ」があります。ブリッジは、前後の歯を利用して、失われた歯を補綴(ほてつ:歯を補うこと)する治療です。連続する3本の歯をA・B・Cとします。Bが失われたとき、AとCの歯があれば、ブリッジによる補綴が可能です。

この場合、ブリッジをするなら、まずAとCの歯を削り、「かぶせ物の土台」にします。大きな虫歯に冠(クラウン)治療をするときと同じ要領です。そして、最後にA・B・Cの3本分の長さに相当する冠(クラウン)をAとCにかぶせます。根があるのはAとCだけですが、人工歯はA・B・Cの3本分を立てるわけです。こうして、2本の歯を支台にして、3本の歯を支える治療が「ブリッジ」です。

親知らず_虫歯のブリッジ

今、A・B・Cと表現した3本の歯が「第一大臼歯(6歳臼歯)」「第二大臼歯(12歳臼歯)」「第三大臼歯(親知らず)」だとしたら、どうでしょう? 失われた第二大臼歯をブリッジで補うためには、親知らずが必要です。

ブリッジには「前後の歯を削る」というデメリットもありますが、削る歯が親知らずなら、それほど問題は感じません。「抜いていたかもしれない歯」を削るぶんには、大きな問題ではないからです。

そして、ブリッジには大きなメリットもあります。入れ歯のように外れないので、普通に歯磨きをしながら維持していくことができます。入れ歯に抵抗のある若い年代では、「ブリッジのほうが良い」というニーズもあるのです。ブリッジはインプラントと違って保険診療ですから、「保険内で入れ歯以外の選択肢を考えたい」という患者さんには大きな選択肢になります。

ブリッジの支台にするときは歯を削りますから、今、虫歯治療のために削ることを気にする必要はありません。第二大臼歯に万が一のことがあったら…と考え、虫歯になった親知らずを保存しておくのは、十分に合理的な選択です。

1-2 親知らずを歯牙移植に使うことができる!

失った歯を補う治療の1つに「歯牙移植」があります。歯牙移植というのは、「ほかの場所に生えていた本人の歯を、歯を失った部位に移動させる治療法」です。たとえば、第一大臼歯・第二大臼歯が失われたとしましょう。このとき、親知らずが残っていれば、歯牙移植を試みることができます。

親知らず_虫歯の治療イメージ

歯は「歯根膜(しこんまく)」という組織によって、歯槽骨に固定されています。また、歯根膜には「噛んだ食べ物の硬さを感じとる役割」があり、自然に噛むために必要な組織です。入れ歯・インプラントは歯根膜がないので、「本当の意味で天然歯と同じ噛み心地」にはなりません。その点、歯牙移植した歯は「歯根膜ごと移植可能」なので、天然歯と同じ感覚で使うことができます。

ただ、歯の神経を残したままで移植することはできません。移植したあと(一般には4週間後)で神経を取りのぞき、歯の内部が感染しないよう薬剤を詰めます。その後、2~6か月にわたって内部の薬剤を交換しながら、無菌状態を維持し、最後に最終的な薬を詰めて「かぶせ物」を入れます。要するに、歯牙移植に用いた親知らずは、大きな虫歯を治療したときと同じく「神経を抜いて、かぶせ物をした歯」になるわけです。

ちなみに、歯牙移植は以下の2つの条件を満たせば、保険診療になります。

◆移植する歯(ドナー)が「親知らず」または「埋伏歯」である
◆移植先の歯が、まだ残存している

埋伏歯というのは、「歯茎埋まって、表面に出てこない歯」です。歯牙移植に使う歯は、「親知らず」または「埋伏歯」のどちらかでなければいけません。また、移植先の歯は「抜歯前」であることが必要です。すでに抜いてある場合、保険診療にはなりません。

これらの条件を満たしていれば、「保険内で、インプラントより自然な歯を手に入れることが可能」ということです。万が一のときに歯牙移植ができるかもしれないと考えれば、親知らずを保存する意義は十分ではないでしょうか?

歯牙移植をするときには、神経を除去して「かぶせ物」をします。それならば、今、虫歯になった親知らずを削ることに大きな問題はありません。多少、削ってあったとしても、歯牙移植には使えるからです。

2.こんな場合は抜歯…!虫歯の親知らずを保存できないケース

ここまで、「たとえ虫歯になった親知らずでも、保存する価値はある」と解説してきました。せっかく生えてきた歯ですから、ほかに大きな問題がないなら、虫歯治療をして保存するほうが合理的です。

しかし、どんな場合でも親知らずを残せるか…というと、やはり、そういうわけではありません。親知らずの大部分が抜歯されるには、それだけの理由があるのです。具体的には、以下のような場合、「虫歯治療をせずに抜歯」となるでしょう。

2-1 親知らずが斜めに・横向き生えてきた場合は抜歯!

親知らずが斜め・横向きに生えてきた場合、保存することはできません。斜めになった親知らずは、さまざまな口腔トラブルを誘発するからです。

親知らず_虫歯で斜めのイメージ

多くの場合、斜めになった親知らずは、手前の歯―第二大臼歯のほうに傾いています。そのため、第二大臼歯を圧迫して、ぐいぐいと圧力をかけてしまうのです。横から押された第二大臼歯は、押された方向に動いて歯並びを乱したり、寿命が短くなって早くに抜けてしまったりします。

周りの歯に悪影響を与えてしまうようでは、保存することはできません。悪影響が出てくる前に、親知らずを抜歯して、事態の収拾を図ることになります。つまり、虫歯の治療はせず、即抜歯です。

2-2 一部が歯茎に埋まったままの場合も抜歯!

きちんと生えてこないで、部分的に歯茎に埋まっている歯を「半埋伏歯」といいます。たいていは斜めに生えてきた歯が半埋伏歯になるので、「斜めに生える」と「一部が埋まったまま」は2つ同時に発生することが多いです。

親知らず_虫歯の半埋伏

歯茎に埋まった部分があると、埋まった箇所を歯磨きすることができません。歯茎が邪魔になって、磨けないからです。結果、その部分に歯垢が溜まり、「歯茎の炎症」「虫歯」を誘発します。親知らずが原因で歯茎が腫れることを「智歯周囲炎」といいます。

埋まった親知らずがある限り、まわりの歯茎はたびたび炎症を起こすでしょう。根本を断ち切るしかないので、抜歯することになります。虫歯になった部分を治してまで、保存することはまずありません。

3.まとめ

たとえ虫歯になっていも、ほかに大きな問題がないなら、親知らずを保存する意味はあると思います。「ブリッジの支台」「歯牙移植」などに活用できるからです。

しかし、「隣の歯」「まわりの歯茎」に悪影響が出ている場合、わざわざ虫歯を治してまで保存することはありません。むしろ、周囲への悪影響によるダメージが大きくなるからです。親知らずの虫歯を治療するかどうかは、「保存することで生じるリスクとリターン」を比較した上で決定されるのです。

不正確な情報を報告

不正確な情報を報告

メールアドレス:任意
コメント(オプション):
ページトップへ