TCHは口腔トラブルの元!?正しい噛み合わせ習慣のススメ

TCHは口腔トラブルの元!?正しい噛み合わせ習慣のススメ

上下の歯が頻繁に接触しているようなら、TCH(歯列接触癖)になっているのかもしれません。TCHは顎関節症など口腔トラブルの要因になると考えられており、「治療・改善の対象」です。

こちらの記事では、「セルフチェック&セルフケア」を軸に「自分でトライできるTHCの改善方法」を解説しています。さまざまな口腔トラブルを防ぐためにも、ぜひ、この機会にTHCを改善しましょう。

この記事の目次

1.THCは、無意識に上下の歯が触れ合うこと!

本来、上下の歯が接触するのは「1日合計20分未満」が適正とされています。食事のときに噛むのは一瞬ですし、会話のときに歯が触れ合うのも一瞬のことです。あとは力を入れるときに歯を食いしばるかもしれませんが、それも普通は数秒でしょう。長時間にわたって、上下の歯を接触させる必要はありません。

そのため、何もしていないとき、上下の歯は離れているのが普通です。唇を閉じていても、上下の前歯の間には「2~3mmの隙間」があります。この隙間を「安静時空隙(あんせいじくうげき)」と呼んでいます。

しかし、中には「何もしていないときに上下の歯が接触する人」がいます。一瞬ではなく、持続的に上下の歯を噛み合わせているわけです。これが「TCH」です。「Tooth Contacting Habit」の略称で、日本語では「歯列接触癖」と呼びます。目安として、「1日あたり20分以上、上下の歯が触れている」という場合はTCHです。

2.TCHは、口腔トラブルの原因になる!

「ただ上下の歯が触れ合っているだけで、何の問題が…?」と考える人もいると思います。しかし、最近では「THCがさまざまな口腔トラブルの原因になる」という捉え方が一般的になってきました。

実は、強く噛みしめなくても、上下の歯が当たるだけで「咀嚼筋(そしゃくきん)」の活動が活発になることがわかっています。咀嚼筋が動いているとき、顎関節は押さえつけられて血のめぐりが悪くなります。この状態が慢性化すると顎関節に負担がかかって、口腔トラブルを招くわけです。

そのほか、TCHによる「歯の接触過多」は、歯それ自体にも負担をかけます。人間の噛む力は体重と同じくらいに相当します。本人としては「軽く歯を当てているだけ」であっても、歯には予想以上の負荷がかかっています。

この章では、TCHに起因する「さまざまな口腔トラブル」について確認することにしましょう。

2-1 顎関節症の悪化

上下の歯をいつも接触させていると、咀嚼筋が活発になり、顎関節に負担がかかりやすくなります。結果、噛み合わせたときに痛みが出る「慢性咬合痛」、口が開きにくくなる「開口障害」などのリスクが生じます。慢性咬合痛、開口障害などの噛み合わせに関する異変は「顎関節症」の一種です。

2-2 詰め物・かぶせ物の脱落

上下の歯が接触していると、詰め物・かぶせ物に悪影響が出ます。詰め物・かぶせ物は人工物であり、歯と一体化しているわけではありません。セメントで接着してあるだけです。何度も歯があたると、セメント部分がはがれてしまい、詰め物・かぶせ物が脱落してしまいます。

また、上下の歯があたる衝撃は、詰め物・かぶせ物の本体にもダメージを与えます。コンポジットレジンなど強度が低い素材だと、割れてしまうこともあります。

2-3 歯周病の悪化

TCHは歯周病の要因にもなります。歯に物理的な力がかかると、歯周ポケットが拡大するからです。これは、「地面に木の枝を突き刺した状態」を思い浮かべると分かりやすいと思います。木の枝を真っ直ぐに突き立てれば、枝は砂場に立つでしょう。しかし、枝を叩いたり、横から引っ張ったりすると、「枝が刺さっている地面の穴」が広がってしまいます。結果、枝はぐらぐらして、いつか倒れてしまうに違いありません。

歯に過度な力が加わると歯周病が悪化するのも、同じ理屈です。「地面の穴」と同じように、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が拡大してしまうわけです。歯周ポケットが拡大すれば、内部に歯周病菌が入りこんで歯周病は悪化します。

2-4 慢性的な口内炎・口腔外傷

歯を接触させる癖があると、頬(ほほ)の内側、舌などを噛んでしまうリスクが上がります。無意識に歯を噛み合わせたときに、噛んでしまうわけです。強く噛めば外傷の原因になりますし、慢性的に同じ場所を刺激すれば口内炎の原因になります。

3.自分で確認できる!TCHのセルフチェック

正確な診断を受けるには歯医者さんを受診する必要がありますが、「TCHかどうかの目安」を知るためのセルフチェック方法が存在します。「ひょっとしてTCHかも…」と思ったら、次の方法で確認してみてください。

TCHセルフチェック法

まず、上下の前歯を軽く接触させます。噛むのではなく、触れ合わせるだけです。上下の前歯が軽く触れあっている状態を3分ほど維持してみてください。

このとき、「接触させるまでもなく、すでに接触していた」という場合は、恐らくTCHでしょう。また、「苦労することなく、上下の歯が触れ合った状態を3分維持できた」という方も、TCHの疑いがあります。

このとき、「上下の歯が震えるように動いて、歯がカチカチと小刻みにあたりはじめた」という人が多いと思います。それが正常な反応です。

次に、上下の歯を少しだけ離した状態で、唇だけを閉じてみてください。

このとき、「唇を閉じたら、上下の歯も接触してしまった」という場合、TCHの疑いがあります。「上下の歯が離れたままで、唇だけをすんなり閉じられた」という人は、特に問題ありません。

これら2つのセルフチェックをおこなって、両方とも正常だった場合は「恐らく、TCHではない」と考えてOKです。

4.自分で改善を目指す!?TCHのセルフケア

TCHは病気ではなく、「歯列接触癖」です。顎関節症などを起こしていないなら、まだ「身体に良くない習慣」のレベルにとどまっています。習慣の段階であれば、セルフケアで改善を目指すことも可能です。

「癖・習慣」を直すわけですから、「別の習慣」で上書きする方法が役立ちます。具体的には、冷蔵庫・天井・壁など「ふだん目がいく場所」にメモを貼る「リマインダー法」がおすすめです。メモの内容は「歯を離す」といった内容です。

家のあちこちに「歯を話す」というメモを用意しておけば、そのメモが目に入るたびに「上下の歯は接触していないかな?」と確認する習慣がつきます。そして、もし上下の歯が接触していたら、すぐに離すわけです。いつも「上下の歯を離さないと」と意識していれば、次第にそれが習慣化します。早い人で数週間、平均して数か月あればTCHの改善が見られます。

5.まとめ

歯をたびたび接触させるTCHは、さまざまな口腔トラブルの原因になります。顎関節症・歯周病などの発症リスクを下げるためにも、自分の「噛み合わせ癖」をチェックしてみましょう。

また、TCHの疑いがあって、さらに「口を開けづらい」「口腔内に痛みがある」という場合、何らかの口腔トラブルを発症している確率が高いです。すでに自覚症状があるときは、セルフケアに頼らず、歯医者さんを受診するようにしてください。

 

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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