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歯周病予防で糖尿病も防げる!?2つの病気が持つ深い相関関係とは…?

歯周病_糖尿病

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近年、歯周病がさまざまな全身疾患と関連していることがわかってきました。特に「歯周病との関連が深い疾病」としては、糖尿病が挙げられます。「歯周病の人は糖尿病になりやすく、糖尿病の人は歯周病になりやすい」という相関関係があることからも、連動していることは明らかでしょう。

こちらの記事では、歯周病と糖尿病の関係を解説した上で「全身の健康のためにも、歯周病予防が重要である」という事実をお伝えしたいと思います。

1.歯周病と糖尿病!それぞれの原因・症状

歯周病と糖尿病は、どちらも日本人に多く見られる疾病です。歯周病の有病率は成人の80%と言われていますし、糖尿病の有病率は男性が15.5%、女性が9.8%です。ちなみに、歯周病は「歯肉・歯周組織に炎症があると思われる人の割合」、糖尿病は「治療中もしくはHbA1c値が6.5%以上」を有病者と捉えています。HbA1c値は「赤血球のヘモグロビンのうち、糖と結合している割合」です。

以上の統計から、「歯周病と糖尿病は日本において、多くの人が罹患する疾病である」と結論づけることができます。また、中高年以降に増加する…という点においても、2つの疾病はよく似ています。

参照URL①:http://www.8020zaidan.or.jp/info/origin.html
参照URL②:http://www.dm-net.co.jp/calendar/chousa/population.php

1-1 歯周病の原因&症状まとめ

歯周病の原因となるのは、歯周病菌です。歯肉炎を引き起こす原因菌としてはアクチノマイセス・ネスランディ菌、アクチノマイセス・ビスコーサス菌などが知られ、歯周炎を引き起こす原因菌としてはプレボテーラ・インターメディア菌、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌などが知られています。

歯肉炎は歯茎、歯周炎は「歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)」の炎症ですが、両方をまとめて広義の歯周病と捉えて構わないでしょう。

さて、歯を失うリスクが高いのは、歯周ポケットで進行する歯周病です。歯周ポケットの歯垢・歯石の中で歯周病菌が増殖すると、徐々に歯と歯茎が離れていき、歯周ポケットが拡大します。歯周ポケットが4mm以上になると、一般に歯周病と定義しています。

さらに歯周病が進行すると、最終的には「歯槽骨(歯を支える骨)」が溶けていき、歯がグラグラと揺れ始めます。このレベルになると、歯周ポケットは7mm以上に拡大し、多くは歯を失うことになります。ほとんどは自覚症状なしで進行していくため、「虫歯以上に歯を失うリスクが高い疾病」として注意が必要です。

1-2 糖尿病の原因&症状まとめ

糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病が存在していますが、一般に糖尿病と認識されているのは、2型糖尿病です。1型糖尿病は生活習慣と関係なく自己免疫性疾患などを原因としており、多くは子供のころに発症します。以上から、こちらの記事で「糖尿病」と記載するときは2型糖尿病を指しているものと捉えてください。

糖尿病が肥満・運動不足といった生活習慣に起因することは広く知られています。食事をすると血糖値(血液中の糖)が上がりますが、インスリンというホルモンの働きで次第に血糖値は低下します。しかし、日常的に過度の糖質を摂取していると、次第に血糖値が下がりにくくなっていきます。膵臓が疲弊して、インスリンを分泌しなくなるからです。

「血糖値を上げるホルモン」は、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンと複数存在しますが、「血糖値を下げるホルモン」はインスリン1つだけしか存在しません。生物は長い歴史の中で飢餓と戦い続け、進化を続けてきました。飢餓に対抗して「食べていないけれど血糖値を上げる」という手段は複数持っていても、飽食に対抗する手段には乏しいのです。

こうして、高血糖の状態を解消できなくなると、血管が糖によるダメージを受けて動脈硬化が進みます。また、血管が傷ついたり詰まったりすることで、ほかの組織にもダメージは拡大します。目の網膜に血液が行き届かなくなる「糖尿病網膜症」、腎臓の「血液を濾過(ろか)する能力」が低下する「糖尿病腎症」、手足のしびれや感覚鈍麻(どんま)を起こす「糖尿病神経障害」など、さまざまな合併症が起こります。

2.歯周病と糖尿病の切り離せない関連性

「糖尿病と診断された人は、歯周病になっていることが多い」のに加え、「歯周病と診断された人は、糖尿病である割合が高い」という統計が出ています。つまり、歯周病と糖尿病は併発することの多い疾病です。この章では、歯周病と糖尿病の相関関係を分析することにしましょう。

2-1.歯周病が糖尿病にもたらす影響

歯周病菌は、歯茎から血管に入りこんで全身に回ります。歯周病菌そのものは体内の免疫で死滅しますが、歯周病菌の細胞壁に含まれる内毒素(エンドトキシン)は血管内に残存します。すると、血液に含まれるエンドトキシンに反応し、脂肪組織・肝臓などがTNF-α(腫瘍壊死因子)を産生します。

TNF-αはサイトカイン(情報伝達をおこなうタンパク質)の一種で、「インスリンによる血液中の糖質取り込み」を阻害する性質をもちます。つまり、血糖値が下がりにくくなるわけです。

実際、糖尿病患者に歯周病治療をおこなうと、血液中のTNF-αに加え、HbA1c値(血糖値の状態を知る指標になる数値)の減少が見られます。以上から、「歯周病は糖尿病の誘発・悪化に一定の影響をもたらす恐れが強い」と判断して構わないでしょう。

参照URL:http://www.jacp.net/perio/effect/

2-2 糖尿病が歯周病にもたらす影響

血糖値が上昇すると、血液中に「糖化タンパク(糖質とタンパク質が結びついたもの)」が増加します。糖化タンパクには免疫細胞の1つ―マクロファージを活性化する性質があります。活性化されたマクロファージは、さまざまなサイトカインを放出し、体内の免疫システムを臨戦態勢に導いていきます。免疫が臨戦態勢に入るということは、「病原体と戦うため、体内を炎症状態に近づけること」を意味します。

炎症を起こしやすくなると、歯周病菌が住みつく歯周ポケットの炎症が活発になり、歯周病の影響が増大します。結果、歯茎が腫れ、歯槽骨(歯を支える骨)が溶けるなど、歯周病の症状が悪化するわけです。

普通、炎症が起きて免疫が戦いはじめると、そのときは腫れ・痛みが出ても、病気は治癒する方向に向かいます。しかし、歯周病は例外で、免疫が働けば働くほど、歯槽骨が溶けていく傾向にあります。これには骨免疫という問題が関連しているのですが、ここでは「歯周病は免疫が働きすぎると悪化する」とだけ理解していただければ十分だと思います。

【関連記事】 歯槽骨が溶けるメカニズム~歯周病がなぜ歯を失うことにつながるのか?

以上から、「糖尿病にかかっていると、歯周病を併発する恐れが強い」という事実を導くことができます。実際、疫学的統計においても、「糖尿病患者の歯周病有病率が高い」と示されています。

3.まとめ

歯周病と糖尿病に深い相関関係があることから、「歯周病を予防することで、糖尿病リスクを下げられるのではないか」という可能性に行きつくことができました。糖尿病は自覚症状が少ないまま進行し、最終的には人工透析に至るなど、余命を大きく短縮する要因となります。日々の歯周病予防で、糖尿病リスクを下げることができるならば、「歯周病予防で将来の健康状態を大きく改善できる」と捉えることも可能でしょう。

糖尿病は「一卵性双生児の場合、一方が糖尿病だと、もう片方も糖尿病になることが多い」とされており、遺伝的形質も深くかかわっています。親族に糖尿病の患者がいるようなら、なおのこと、歯周病予防によるリスクコントロールをしてみてはいかがでしょうか?
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