歯の健康はカラダに通ずる。「歯科内科」を提唱

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日本では多くの人が歯医者さんは虫歯など悪いところを治すだけの場所と考えています。そのことについてどう思われますか?
やはり予防が大事です。歯科医院に通って悪いところがあったら早めに治す。歯周病であったら食事療法をするとかね。いろいろなやり方があるわけですが、早めに手当をする必要があると思います。それには予防意識を持って悪いところがなくても歯科医院に通うことが大切です。
先生は「歯科内科」を提唱していますが、具体的にはどのようなことでしょうか?
歯の病気はこれまで、歯の硬組織(エナメル質と象牙質を含めた歯全体)、口腔内の粘膜の病気、歯周病と言って歯茎の病気、こういうのに限られていると思われてきました。ところが歯周病と糖尿病の関連を含めて歯の病気が全身とつながっていることがわかってきました。 だから「糖尿病」「認知症」「骨粗しょう症」といろいろ病気がありますが、歯科医療をキチッとすれば結構防げることもあります。患者さんの口の中を見れば、「この人ちょっと糖尿病があるのでは?」と推測でき、「内科で見てもらってください」というふうに伝えます。そういう意味で「歯科内科」を提唱しています。歯科は歯を削って埋める外科ですけど、内科的要素も十分にあるというのが最近の見解です。
身体の健康のために歯の健康を維持することが大切なわけですね。
人生100年時代を迎え、歯の健康をそこまで維持していく意識が大切です。もちろん見た目の問題もありますから、私がやっている美容診療は「若く、美しい口元がモットー」です。例えば女優さんなんかでも、60歳70歳になってもそうは見えない人がいるでしょ? 「あんな歳の取り方をしたらどうですか?」という提案をしています。
「実年齢と比べて、自分の歯は何歳なのだろうか?」は気になるところですね。
「オーラルフレイル」という概念があります。フレイルが何かと言うと、老化や老衰という意味です。体だけじゃなく歯も老化します。歯の老化が何かと言うと、歯がすり減る、しみるようになる、噛めなくなる、痛みが出る、神経処置をする、割れるといった流れでしょうか。 歯が老化すると、物が段々食べられなくなります。硬い物が好きで、昔は平気でイカ、タコ、アワビ、たくあん、そういった物を食べていたのが、段々食べられなくなってくる。食べるのが大好きな人は、「好きな物を食べられなくなったのが一番悲しい」って言います。歯も老化するから、老化しないように、いつまでも若く美しくいられるように、老化に歯止めをしてあげないといけません。
歯の老化を食い止めるには、具体的にどのようなことをすればよいでしょうか?
とにかく硬組織、虫歯など歯の病気は早めに見つけて治す。歯茎など歯を支えている軟組織は手入れをして歯周病の予防をしていく。この2つです。 もちろん、割れたとか、欠けたとか、虫歯とか硬組織の治療以外でも、食べた物を咀嚼できるように、噛み合わせがうまくいくというのは常にやらないといけません。大切なのは歯が痛い、痛くないに関わらず、普段通っている歯医者さんに定期的に通うことです。それが一番大事なことだと思います。 歯学博士の学位論文は、キシリトールなど「代替甘味料」の研究でした
先生は歯学博士だとお聞きしました。歯学博士とはどんな学位なのでしょうか?
歯学博士になるには歯科大学を卒業した後も大学院を出る。あるいは大学院を出なくても研究者として論文を発表する。この2つの道筋があります。大学院は卒業するまで最短4年ですが、歯科医師として働きながらも研究して自分の学位論文を出して、採択されれば歯学博士になれます。 ちなみに私の学位論文は、「唾液内での単糖類アルコールの発酵について」でした。分かりやすく言うと、「代替(だいたい)甘味料」のことで、砂糖に代わるものです。砂糖を食べていると虫歯がどんどんできますから…。デパ地下なんかに行くといろいろなお菓子がいっぱい売っているでしょ? 好き勝手に食べていると、もちろん体の中にも糖質がいっぱい入って良くないのです。 だから虫歯にならないように砂糖に代わる甘味料はないかという研究が、私の学位論文です。「マルチトール」、「ラクチトール」、それに糖アルコールの「キシリトール」といったものです。それが今は、食品に使われているわけです。 キシリトール入りのガムは虫歯になりにくいガム、キシリトール入りのチョコレートは虫歯を作りにくいチョコレートになるわけです。40年くらい前の研究がどこかに役に立っているわけですよ。
先生が日本とアメリカの「歯科医師」と「患者さん」で一番感じた大きな違いは何でしたか?
歯医者さんの待合室の壁には俳優さんや有名人の写真がズラっと貼ってあって、全部自分が治した患者さんなんです。日本はそれやっちゃうと、プライバシーを守ってくれという話になるから、まずできません。 どんなに目立たない歯の詰め物や被せ物でも、私らから見ればすぐ分かるんだけど、「いや、それは内緒にしてください」という話になる。向こうはおおっぴらですよ。歯を治したらもう嬉しくて喜んで、先生に感謝のキスをして帰るよ(笑)   美容診療について語ってくれた松尾先生。自身の米国での体験を思い起こしながら、日本人が歯を美しく見せることへの意識が低いことを感じている様子でした。さらに、松尾先生は「歯科内科」についても提唱しています。美しさだけでなく、健康的な歯を維持することは、身体全体にも好影響を及ぼすということを我々は認識することが大切なのです。

松尾通先生による動画メッセージ