歯の異変

「虫歯じゃないのに歯が痛い」は非定型歯痛かも…症状・原因・治療法を確認

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「歯の痛みを感じるのに、虫歯やその他の原因が見つからなかった…」という状況に、思い当たる方はいませんか?口内のトラブルで歯が痛くなる原因はいくつか存在します。虫歯、親知らず、歯根破折(歯の根が折れていること)、歯の神経が炎症している、などです。
しかし、過去に歯医者さんで治療を断られたり、検査や受診をしても「問題ない」と言われたりした経験がある方は、非定型歯痛を念頭に自分の症状を確認してみましょう。この記事では、非定型歯痛の症状や原因、治療法を解説します。

◆目次
1. 非定型歯痛の症状と原因
2. 非定型歯痛の治療方法
3. 非定型歯痛から歯科心身症へ
4. まとめ

1.非定型歯痛の症状と原因

今回紹介する「非定型歯痛」とは、歯痛の原因が「歯」「歯髄」「歯茎」にはない歯痛の総称です。
別名、「非歯原性歯痛(ひ-しげんせいしつう)」とも呼ばれます。
なかなか原因が明らかにならないことも多く、歯医者さんでの治療が有効ではないことも多い歯痛です。

明確に痛みの原因が口内にある場合の歯の痛みを、「歯原性歯痛(しげんせいしつう)」と呼びます。
歯原性歯痛は、歯医者さんで治療を受けることによって治ることがほとんどです。

1-1.非定型歯痛の症状

非定型歯痛の方は、以下の症状に当てはまります。
当てはまる数が多いほど、非定型歯痛の疑いが強まります。

①歯やその周囲に痛みがあり、顔面痛を伴う場合がある
②痛みを感じる部分に虫歯などのはっきりとした原因がない
③痛みは強く、一層激しく痛むときがある
④一時的ではなく、痛みが長期にわたってある
⑤冷たい水などで刺激しても、痛くない
⑥歯医者さんで治療しても痛みが治まらない
⑦麻酔が効くときと効かないときがある
⑧歯医者さんで治療すると痛みがひどくなる
⑨治ったと思ってもまた痛くなる

1-2.非定型歯痛の原因

非定型歯痛になる原因は、7つの場合に分類することができます。

①筋・筋膜性歯痛

顔にある筋肉や筋膜の痛みが原因で、歯痛が起こる場合です。
食べ物を噛むときに使う筋肉に、「咬筋(こうきん)」や「側頭筋(そくとうきん)」があります。
この筋肉や筋膜の痛みを、歯の痛みとして感じることがあります。

公益財団法人日本医療機能評価機構の資料によると、顔の筋肉に痛みがある人のうち、11%の人が歯痛を感じるとする報告があります。
上下の奥歯の痛みとして感じることが多くあるとされています。

表情筋の断面図

②神経障害性歯痛

顔の神経に起こった障害が原因で、歯痛が起こる場合です。
顔にある主要な神経に、三叉神経というものがあります。
三叉神経は、脳神経の一つで、眼の神経、上顎の神経、下顎の神経の3つに分岐することから、この名で呼ばれています。
この神経が傷ついたことによる神経痛や、帯状疱疹を発症した際の痛みを、歯痛と感じることがあります。

かつて虫歯の治療をおこない、歯の神経が傷ついた場合にも起こることがあります。
瞬間的に鋭い痛みが起こる「発作性神経痛」の前に歯がしみる症状を感じたり、強い痛みが長時間持続する「持続性神経痛」が起こっている間に強烈な歯の痛みを感じたりします。

③神経血管性歯痛

神経や血管への負荷が原因で歯痛が起こる場合です。
偏頭痛や群発頭痛の症状を引き起こしたときに、三叉神経を巡り、歯の痛みとして感じることがあります。

慢性的な頭痛がある人の14~20%に歯痛が発生するというデータがあります。
歯の神経が炎症を起こしたときの痛みと、よく似ているとされています。

④上顎洞性歯痛

鼻の両側にある上顎洞が炎症を起こしたことが原因で、歯痛が生じる場合です。
このケースで歯痛を感じた人の割合は、18%とする報告があります。

⑤心臓性歯痛

心臓に起こっている病気が原因で、歯痛が起こる場合です。
狭心症や心筋梗塞といった病気を発症した際に、歯痛を感じることがあります。
特に、狭心症が原因で歯に痛みを感じた人の割合は、38%に昇るとするデータがあります。

胸を刺すような強い痛みが迷走神経を通り歯の痛みとして感じられるほか、心臓の病気を患っている人が運動をしたときに歯の痛みを感じることがあるようです。

⑥精神疾患または心理社会的要因による歯痛

統合失調症やうつ病、心理的・社会的なストレスが原因で、歯痛が起こる場合です。
このような病気の症状が身体にまで及ぶとき、歯痛として現れることがあります。

ストレスが原因で歯に痛みを感じる女性の写真

⑦特発性歯痛

上記のケース宇どれにも当てはまらず、原因が特定できない場合の歯痛です。
「特発性」とは「原因不明の」という意味になり、「特発性歯痛」であれば「原因不明の歯痛」という意味です。

⑧その他

①~⑥に当てはまらない病気でも、歯痛の症状が現れる場合があります。
この場合、原因とされる病気が特定できれば、「特発性歯痛」には該当しません。

1-3.非定型歯痛の診断の難しさ

多くの場合、歯が痛ければ歯医者さんでの治療を希望するでしょう。
しかし、歯科医師がいくら検査しても、非定型歯痛の場合は口内に原因を見つけることができません。
患者さんは実際に歯に痛みを感じているので、歯医者さんの診断に納得がいかなかったり、原因が見当たらなくても痛むので治療をしてくれ、と相談したりすることは少なくありません。

非定型歯痛について、十分な知識を持っている歯医者さんが少ないことも、正しい治療がおこなわれない原因の一つとして挙げられます。
仮に、正しい知識を歯科医が持っていたとしても、患者さんが非定型歯痛について理解をしないと、歯科医師の対応が不満につながる場合があります。

非定型歯痛のうち、いずれかの原因を特定するためには、多くの検査を受ける必要があります。
診断が確定するまで長い時間を要したり、医療をおこなう側の知識や技術レベルによって患者さんの負担が増えたりすることが考えられます。

非定型歯痛に思い当たる場合でも、まずは歯医者さんを受診しましょう。
口内のトラブルではないことを確認したあと、ほかの病気からくる歯痛であることを疑う必要があります。

非定型歯痛の診断フローチャート

2.非定型歯痛の治療方法

非定型歯痛の治療期間は、基本的に長期間になる傾向があります。
人によっては数ヶ月~数年かかる人もいます。

2-1.薬物療法

薬によって症状を軽減できる場合があります。
薬物療法は、基本的には、以下の2パターンのうちどちらかになります。

①歯痛を引き起こしている病気に用いられる薬を服用する

たとえば、頭痛であれば頭痛薬、上顎洞の炎症であれば抗菌薬、精神的な疾患であれば抗うつ薬など

②痛みの原因に対し、麻酔をする

顔の筋肉や筋膜が原因の場合

2-2.薬物以外の治療

顔の筋肉や筋膜が原因の場合、マッサージやストレッチが有効だとされています。
ほかに、レーザー治療や電気療法を検討する場合もあります。

歯の痛みを取り除くために顔のマッサージをする女性

2-3.心療歯科

心療歯科とは、歯や口内に発生する症状に精神的な問題が関わっていると疑われる場合に、専門的な診断や治療をおこなう科目です。
歯や口腔内の状態の診療はもちろん、精神状態やストレスといった、様々な角度から診断をおこないます。

3.非定型歯痛から歯科心身症へ

非定型歯痛に対する知識があり、歯医者さんの立場から治療をサポートしてくれる医院は、全国的にみても少ない状況です。
もし、非定型歯痛に対し十分な理解がない歯医者さんで治療を受けた場合、歯医者さんへの強い不信感が生まれ、歯科心身症になってしまう恐れが考えられます。

3-1.歯科心身症とは

日本歯科医師会では、以下6つの症状が「歯科心身症」と総称されています。
歯科心身症に思い当たる方は、自分の症状にあった科目のある歯医者さんに相談しましょう。

①歯科恐怖症

対応医院:心療歯科、歯科恐怖症に対応した歯科

過去に歯医者さんで治療を受けた際に、精神的苦痛やトラウマを感じ、歯医者さんに恐怖心を抱いている方のことです。
治療方法は、心療歯科や歯科恐怖症に対応している歯医者さんに、勇気を出して相談することです。
予約する際には、自分が歯科恐怖症であることを、きちんと伝えることが大切です。

②口臭恐怖症

対応医院:心療歯科、口臭外来

口臭恐怖症とは、「自臭症」とも呼ばれています。
検査をしても異常がないのに、自分には強い口臭があると思い込み、周りの人に迷惑をかけていると考えている状態です。
心理療法が必要になるため、心療歯科に相談することをおすすめします。
口臭の相談は恥ずかしいことではありません。
心療歯科に相談する勇気さえ出せれば、そういった患者さんをたくさん治療してきた先生が対応してくれます。

③かみ合わせの異常感

対応医院:口腔外科、心療歯科

実際に噛み合せが悪いわけではないのに、噛み合せが異常であると強く感じている状態です。
「噛み合せが悪いと体調が悪くなる」といった情報を得ることが、発症につながるようです。
自分の身体に起こっている不調は、噛み合せの異常が原因だと思い込んでしまうことが原因です。

検査した結果、実際に噛み合わせが悪い患者さんもいますが、大きな異常がなくてもかたくなに「噛み合せが悪い」と訴える方も多くいます。
この場合は、心理的療法が必要になるため、やはり心療歯科の受診をおすすめします。

④舌痛症

対応医院、口腔外科、心療歯科

舌に異常は見られないと診断されたものの、舌がピリピリ痺れたり痛みが生じたりする人が該当します。
舌癌だと思い込む人も多くいるようです。

まずは、口腔外科で舌癌の検査をしてもらいましょう。
かかりつけの歯医者さんに一度相談してみるのも良いでしょう。
相談した結果、症状が改善しなければ、心療歯科の受診をおすすめします。

心療歯科でカウンセリングを受ける女性の写真

⑤顎関節症

対応医院:口腔外科、心療歯科

顎関節症を発症した原因に精神的ストレスが該当する場合は、「歯科心身症の顎関節症」となります。
強いストレスを受けた場合、日中や睡眠中に食いしばりや歯軋りをすることがあります。
そのせいで、顎の間接や顎を動かす筋肉に悪影響を及ぼし、顎関節症を発症します。

顎関節症の治療は、口腔外科に相談することをおすすめします。
ストレスの影響が強い場合は、心療歯科を受診しましょう。

顎関節症は、ストレス以外にも発症要因があります。
詳細は「顎関節症が頭痛の原因になる理由とセルフチェック+対処法」を確認してください。

⑥口腔の異常感(口腔内セネストパチー)

対応医院:一般歯科、心療歯科

口腔内に異常の原因がないにも関わらず、痛みや違和感の「幻覚」が起きている状態です。
精神的ストレスと身体の感覚障害が合わさり、発症すると考えられています。

しかし、この異常感は、歯周病の進行が原因の場合があります。
そのため、まずは歯医者さんに歯周病の検査をしてもらうことをおすすめします。

口腔内に異常を感じるのに歯周病ではないという診断が下った場合、心療歯科の受診をおすすめします。
歯周病の詳しい症状については、「歯周病の症状を解説!治療法・感染経路などの知識を総まとめ」を確認してください。

4.まとめ

過去に歯医者さんで治療を受けたが満足した結果を得られなかった、もしくは、原因不明の歯痛で悩んでいるのであれば、非定型歯痛を疑うべきケースかもしれません。
自己判断をせず、必ず信頼できる歯医者さんを受診しましょう。
患者さんに寄り添ってくれる歯医者さんなら、きっと患者さんの不安や悩みに親身になってくれるはずです。

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執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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