【バクテリアセラピー】新しい虫歯・歯周病予防で明るい笑顔を守る

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最近になって、虫歯・歯周病予防の新しい考え方―「バクテリアセラピー」が普及してきています。しかし、バクテリアセラピーという言葉だけで、内容にピンとくる方は少ないでしょう。

そこで、こちらの記事ではスウェーデンからやってきた虫歯・歯周病の予防法―バクテリアセラピーの内容を解説することにしました。

この記事の目次

1.バクテリアセラピーとは、どんな予防法か?

「バクテリア」というのは、細菌のことです。つまり、バクテリアセラピーは「細菌を使った予防・治療」という意味になります。

近年では、「おなかの調子を整えるために乳酸菌を摂取する健康法」が一般的になりました。すべての細菌が有害なわけではなく、「人を健康にしてくれる細菌」と「人を病気にする細菌」がいる…という事実は常識となっています。一般に、有益な細菌を「善玉菌」と呼び、有害な細菌を「悪玉菌」と呼んでいます。

要するに、バクテリアセラピーは「善玉菌を取り入れて、病気を予防すること」を意味しているわけです。なので、ヨーグルトを食べておなかの調子を整える習慣も、広い意味ではバクテリアセラピーの一種といえます。

同じように、「口の中にいる善玉菌を増やし、虫歯菌・歯周病菌を減らす」というのが、口腔内におけるバクテリアセラピーです。

1-1 バクテリアセラピーで、虫歯・歯周病予防ができる!?

バクテリアセラピーによる虫歯・歯周病予防は、スウェーデンが発祥です。スウェーデンはもともと虫歯予防の先進国として知られており、虫歯・歯周病にかかる人がとても少なくなっています。80歳の高齢者でも、残っている歯の本数は平均20本となっています。日本では、80 歳で20本歯が残っている人は5人に1人程度ですから、これは大きな差があると捉えるべきでしょう。

予防歯科としてのバクテリアセラピーを開発したのは、スウェーデンのカロリンスカ医科大学です。カロリンスカ医科大学は、ノーベル生理学・医学賞の審査をおこなう研究機関でもあります。同大学が推進した…という事実が、スウェーデン、ひいては先進諸国でのバクテリアセラピー普及を後押ししたことは間違いないでしょう。

 スウェーデンからやってきたバクテリアセラピーを取り入れることで、スウェーデンのように「高齢になっても自分の歯で噛める」という状況に近づける可能性があります。虫歯・歯周病予防のために、口の中の善玉菌を増やす…という考え方を取り入れてみませんか?

参照URL:https://www.jda.or.jp/enlightenment/8020/dream.html

1-2 バクテリアセラピーのメリット

バクテリアセラピーのように「善玉菌で悪玉菌に対抗する」という方法には、どのようなメリットがあるのでしょうか?

大きなメリットは、「体質そのものを改善できる」という部分です。体内の善玉菌を増やすことができれば、善玉菌は長期的に住みつき、悪玉菌を減らし続けます。

一方、普通の薬では、なかなか長期的な作用を期待することはできません。たとえば、悪玉菌をやっつけるために抗生物質を飲んだとしましょう。そうすると、抗生物質の作用で悪玉菌は死にますが、同時に善玉菌も死んでしまいます。抗生物質は、悪玉菌だけを選んで攻撃してくれるわけではありません。ほとんどの細菌を無差別に攻撃します。そして、多くの場合、抗生物質の服用をやめると、悪玉菌のほうが急速に増殖し、善玉菌を抑えつけてしまいます。

抗生物質は「悪玉菌・病原菌による急性症状」を止めるためには大変有効ですが、体質そのものを改善するには向いていないわけです。

バクテリアセラピーは「善玉菌を増やして、間接的に悪玉菌を抑えつける」という方向性なので、体質を改善できる可能性があります。成果が出るまでに、早くて数日、遅ければ数週間かかるので即効性はありませんが、予防・体質改善作用において大きなアドバンテージを持っています。

2.虫歯・歯周病のバクテリアセラピー!善玉菌の種類と作用

虫歯・歯周病に対するバクテリアセラピーには、どのような善玉菌が使われるのでしょうか?乳酸菌なら何でも歯に良い…というわけではありません。

胃腸に良いと言われている乳酸菌・ビフィズス菌の一部は、むしろ虫歯の原因になります。虫歯・歯周病を予防するためには、「歯に良い影響をもたらす善玉菌」を摂取しなければなりません。

そこで、この章では虫歯・歯周病のバクテリアセラピーに使われる善玉菌の種類を紹介したいと思います。

2-1 L.ロイテリ菌(ラクトバチルス・ロイテリ菌)

歯科のバクテリアセラピーでは、もっとも広く知られている菌種です。L.ロイテリ菌は「ロイテリン」という物質を作り出す働きを持っていて、ロイテリンには虫歯菌・歯周病菌を抑える作用があります。
また、歯垢(プラーク)を分解する作用も知られていて、「虫歯菌・歯周病菌のエサ、住みかを減らす」という意味でも有効性が期待できます。

2-2 乳酸菌TI2711(乳酸菌LS1)

歯周病菌にはたくさんの種類がありますが、そのうちの少なくとも1種類に対して、殺菌作用が確認されている善玉菌です。実験によって認められたのは、P. gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)という歯周病菌に対する抑制作用です。

「乳酸菌TI2711の服用群」と「プラシーボ群」を比較したところ、明らかに「乳酸菌TI2711服用群」で歯周病菌―P. gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の減少が認められました。

歯の表面には「細菌のかたまり(バイオフィルム)」が存在しますが、乳酸菌TI2711は、バイオフィルムを善玉菌優位にコントロールする働きを持っていることになります。

参照URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/47/3/47_3_194/_pdf

3.バクテリアセラピーのさらなる可能性

虫歯・歯周病の予防作用が認められているバクテリアセラピーですが、口腔内に対しても、ほかの部分に対しても、さらなる可能性が期待されています。ここでは、バクテリアセラピーの主な可能性を紹介することにしましょう。

3-1 歯周病治療の効率を高める

歯周病は、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が広がり、内部に歯石ができることで悪化していきます。歯周病菌が歯石に住みつき、歯を支える骨にまでダメージを与える…というのが歯周病です。

悪化すると歯を失う原因にもなる歯周病ですが、バクテリアセラピーには予防だけでなく、治療を助ける作用もあることがわかってきました。一般的な歯医者さんの歯周病治療に加えて、バクテリアセラピーを取り入れたところ、「歯周ポケットの縮小速度が約3倍になった」という調査結果が出ています。

参照URL:http://www.prodentis.jp/

3-2 胃腸の調子を整える!

バクテリアセラピーに使われるL.ロイテリ菌は、胃腸の健康を助ける作用も持っています。胃酸の分泌を抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」とバクテリアセラピーを同時に実施したところ、およそ6割にあたる方のピロリ菌が消滅しました。そのほか、腸の調子を整え、便秘・下痢などを改善する働きも知られています。

参照URL:http://www.prodentis.jp/

4.まとめ

近年、バクテリアセラピーはさまざまな病気に対する有効性が認められてきています。アレルギーによる皮膚炎などに対しても一定の消炎作用があるのではないか…という研究結果も報告されるなど、善玉菌に対する期待はどんどん膨らんでいます。

今後、「虫歯・歯周病になる前に予防する」という予防歯科の考え方がますます普及していくことが予想されます。早い時期に予防をはじめれば、将来的に自分の歯を失うリスクが減少するからです。

バクテリアセラピーに限らず、「どうすれば自分の歯を守ることができるのか」を考えて、日々のセルフケアをおこないましょう。

 

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監修医

尾上 剛先生

ごうデンタルクリニック 院長

経歴

出身校:神奈川歯科大学
卒業年月日:2009年3月

2010年 新潟大学付属医歯学総合病院 勤務
2011年 神奈川歯科大学付属横浜クリニック 入局
2013年 斉藤歯科クリニック 院長就任

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