危険!歯槽膿漏とは歯を失ってしまう病気

危険!歯槽膿漏とは歯を失ってしまう病気

歯槽膿漏とは、一体どんな病気だと思いますか? 誰でも聞いたことのある病名だと思いますが、自分がその症状になってみない限り、どんな症状が出るのかといったことまで深く考えないと思います。

しかし、自分自身が歯槽膿漏になってから考えるようでは遅いのです。なぜなら、歯槽膿漏とは歯を支える骨を溶かしてしまう病気であり、最終的には大切な歯を失ってしまうことにつながるからです。つまり歯槽膿漏とは、“歯を失う”一歩手前の病気だと認識するべきなのです。

ここでは、歯槽膿漏になってしまうプロセスを紹介し、実際に歯槽膿漏になってしまった場合の治療方法もお伝えします。「歯槽膿漏とは何なのか?」そして、「どんな方法で治すのか?」その答えを導き出していきます。

この記事の目次

1.歯槽膿漏になるまでのプロセス

1-1 歯槽膿漏とは歯周病の“末期”の状態

歯槽膿漏とは「歯周病」の一番悪化した状態のことを指しています。歯周病は細菌感染により歯茎が炎症し始め、歯を支えている骨までも溶かされていく病気です。土台である骨が溶かされるということは、最終的に歯が抜け落ちて失われるということを意味しています。

日本人の大人が歯を失う原因の第一位が歯周病です。歯槽膿漏とは歯周病の“末期”の状態なので、自分がもし歯槽膿漏ならば、常に危険であることを頭に入れて置かなければなりません。

下記は「歯を失う原因」を円グラフで表したものと、歯周病の進行プロセスを図で表したものです。

歯を失う原因 

このデータは「日本歯科医師会8020推進財団」による平成17年のデータを基にしています

歯周病の進行具合と症状

1-2 歯肉炎(初期)~歯周炎(中期)まで

歯周病の初期状態のことを「歯肉炎」といいますが、この状態はまだ歯茎が炎症して赤く腫れているだけの症状です。歯磨きのときに出血を起こす場合がありますが、痛みがほとんどないため、自分が歯周病であることに気づかないのが一般的です。

しかし、歯肉炎が進行して歯茎の炎症も進んでくると、赤みも増し始め、退縮が起こり隙間も見えるようになります。このような状態を「歯周炎」と呼んでいます。ちょうどこのあたりから自覚症状も出るといわれています。

1-3 歯槽膿漏(末期)になると歯が“ぐらぐら”して根っこまで見えてくる

歯周炎が進行すると、歯と歯茎の間の「歯周ポケット」がより深くなってしまい、歯がぐらついてきます。そして歯の根っこまで見えるようになり、何もしなくても痛みや膿まで出てくるようになります。この膿が悪臭の原因となり、強烈な口臭を発することになります。このような状態になったときに初めて歯槽膿漏と呼ばれるようになるのです。

歯槽膿漏は歯周病の末期の状態であり、このまま何もせずに放置した場合は、確実に歯が抜け落ちてしまうことになります。

2.歯槽膿漏になると治療も大変になってくる

歯周病は歯槽膿漏になる前に食い止めないと治療も難しくなってきます。一番は歯茎の炎症が出始めた初期の頃に気づいて対処することです。自宅で丁寧な歯磨きを続けていけばやがて改善していきます。

しかし、大体の人は自覚症状が起きてから対処することが多いはずです。歯医者さんへ行くことが嫌だったり面倒だったり、忙しくてそれどころではないという方もいると思います。それでも、何も対処せずに放置していては、歯周病が自然に治るようなことはないのです。

また、歯周病が「セルフケア」だけで改善できるのは初期から中期にさしかかったぐらいだと思ってください。中期から末期に近づいたような状態では、歯医者さんの力を借りなければ完治は難しいと考えるべきです。

詳しくは『これを読めば、歯周病の治し方がわかる!』を参考にしてください

3.歯槽膿漏になってしまう理由と治療方法

◆歯槽膿漏になる理由

では、そもそもなぜ歯槽膿漏になってしまうのでしょうか?それは、毎日の歯磨きのやり方が間違っていたり不十分な場合、歯と歯茎の間の歯周ポケットにプラークが溜まり続けることで、細菌がどんどん増えていくためです。歯周病は細菌感染症ですから、細菌の増殖で悪化を招くと歯槽膿漏を発症してしまいます。

また、近年では遺伝的要因で歯周病になりやすい人、なりにくい人がいる、と言われており、科学的な研究が進められています。

◆歯槽膿漏の治療方法

歯槽膿漏になってしまった場合、薬屋さんで販売しているようなお薬では、進行を防ぐ程度はできても、ひどく悪化してしまった場合はあまり効果を持ちません。また、「セルフケア」だけでは改善には至らないのが現実です。つまり、歯医者さんで根本的な治療を行ってもらうしか方法はないのです。

それでは、歯医者さんでどんな治療を行ってくれるのか、図で確認してみましょう。

歯槽膿漏に対しての治療法

・外科的治療

歯周ポケットが6~8ミリ以上になると、奥深く入り込んだプラークや歯石は歯肉を切開して取り除くしか方法がありません。このやり方を「フラップ手術」と呼んでいます。また、「エムドゲイン療法」と呼ばれる骨の再生療法や、人工の骨を入れて歯周ポケットを浅くする治療方法もあります。

・薬での治療

最近ではお薬を使った治療方法もあります。「3DS」と呼ばれる治療方法で、自分の歯型のマウスピースを製作し、そこに薬剤を注入して5分ほど装着します。薬が浸透し、歯周病菌の殺菌には効果的だといわれています。

詳しくは『歯槽膿漏がもたらす臭いの原因とその対策』を参考にしてださい。

4.まとめ

歯槽膿漏とは、大切な自分の歯を失ってしまう“黄色信号”だと思ってください。何もせず放置した場合、確実に歯は抜け落ちます。そうならないための治療方法を紹介してきましたが、歯槽膿漏になる前に早めの対策を行うことが何よりです。歯槽膿漏とは、大変怖い病気です。このことを頭に入れて、自分の大切な歯を守っていきましょう。

プロフィール&経歴

目指したきっかけ:医療には関心あったが、やはり一番は両親の教育が大きかったのではないかと思う。
やりがい:大学のときは他の職種とは違う特殊性に惹かれていたのですが、実際歯科医になってからはお礼を言われる部分です。

松本歯科大学卒業後、同病院勤務。
琉球大学医学部付属病院歯科口腔外科にて
顎顔面領域悪性腫瘍治療に従事。
その後都内複数歯科医院勤務後、
麻布シティデンタルクリニックを開院。
現在に至る。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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