歯の麻酔の特徴と麻酔を受けたあと気をつける重要なポイント

歯の麻酔の特徴と麻酔を受けたあと気をつける重要なポイント

歯医者さんで治療を受けるとき、歯の麻酔に不安を覚える方は多いと思います。歯医者さんで使われている麻酔の種類や行う手順、麻酔の持続時間や切れたあとの対処の仕方なども気になるところです。

現在では患者さんの痛みを軽減するために、注射針の太さや注入する麻酔液の温度にまで気をつかい、治療がスムーズにおこなわれるよう努めてくれる歯医者さんが多いです。

この記事を読めば、歯の麻酔について知ることができます。そして、歯医者さんで使われる麻酔が、どれだけ患者さんに配慮されたものなのかがわかってきます。

歯科治療への恐怖心も和らぐ内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

この記事の目次

1.歯の麻酔を知って治療に臨もう!

歯医者さんでは、患者さんにリラックスして治療を受けてもらうため、治療中の痛みを軽減する手段として、局所麻酔をおこなってくれます。

局所麻酔の種類や麻酔を施す手順、麻酔の痛みを和らげる工夫などを紹介します。

1-1 麻酔の種類

◆3つに分類される「局所麻酔」

歯医者さんでおこなう局所麻酔は、大きく次の3つに分類されます。3つの麻酔を使い分けて、痛みの少ない治療を進めていきます。

・表面麻酔
歯茎の表面に塗り、麻酔針を刺すときの痛さを軽減させるための麻酔です。ゲル状タイプ、スプレータイプ、シールタイプなどがあります。

・浸潤(しんじゅん)麻酔
歯医者さんでおこなわれるベーシックな麻酔です。細い針を使って歯茎に麻酔薬を注入します。

・伝達麻酔
下顎の奥歯や親知らずの抜歯といった、浸潤麻酔が効きにくいケースで用いる麻酔です。

1-2 麻酔の手順

  • ①歯茎といった粘膜膜を乾燥させた状態で、表面麻酔を歯茎に塗ります。
    ②1~2分ほど経過すると、歯茎の表面の感覚が麻痺してきます。
    ③表面麻酔をぬぐったあと、すぐに浸潤麻酔を注射します。
    ④ケースにより、伝達麻酔をすることがあります。

※このほか針を使用しない麻酔を使用する場合もあります。注射針を使用しない麻酔器で、麻酔薬を強い圧力で粘膜の浅い部分に拡散させる麻酔です。

1-3 麻酔の痛みを和らげる工夫

歯医者さんでは、麻酔の痛みが苦手な患者さんのために、痛みを和らげる工夫をしてくれます。

◆細い麻酔針を使う

細い0・2ミリサイズの針を使用して、針が刺さるときの痛みを軽減してくれる歯医者さんも多いです。針が細いほど、刺したときに痛みを感じにくくなると言われています。

◆電動式の注射器を使う

手動で歯茎に麻酔液を注入すると、圧力が加わり痛みを感じやすくなります。電動式の注射器なら、圧力による痛みを軽減することができます。電動式麻酔が痛くないのは、一定の速度で麻酔薬を注入するためです。

◆人肌程度に温めた麻酔液を使う

麻酔液の温度が体温よりも低いと、体内に注入したときに痛みを感じやすくなります。事前に人肌程度に温めることで、温度差による刺激を抑え、痛みを感じにくくする工夫を取り入れている歯医者さんもいます。

1-4 妊娠中や授乳中でも麻酔を受けられる

妊娠中でも、麻酔を受けることは可能です。歯医者さんの麻酔は、部分的に麻酔液を注入する局所麻酔のため、胎児に影響を及ぼすことはないとされています。

また、胎盤や母乳を通じて麻酔が送られることもないため、麻酔を受けたあとの授乳も心配ないと言われています。

しかし、妊娠中は体調の変化が大きい時期でもあります。麻酔をしてから気分が悪くなったり、体調に異変を感じたりしたら、遠慮なくその場で歯医者さんに申し出ましょう。

妊娠中に治療を受ける際は、あらかじめ妊娠している旨を歯医者さんに伝えておくようにしましょう。

2.麻酔の持続時間

麻酔の持続時間は、種類だけでなく大人か子どもかによって変わるほか、治療中どのタイミングで打つか、麻酔液の量はどれくらいか、といったことでも変わります。

また、切れるタイミングには個人差があります。ここでは、麻酔の持続時間の目安を紹介します。

2-1 大人の麻酔の持続時間目安

大人の場合、浸潤麻酔の持続時間は1~3時間程度、伝達麻酔の持続時間は3~6時間程度と言われています。

2-2 子どもの麻酔の持続時間目安

子どもの場合、浸潤麻酔の持続時間は1~2時間程度、伝達麻酔の持続時間は半日程度と言われています。

子どもは、歯茎や骨の厚みが大人よりも薄いため、麻酔液の量も半分程度にしています。その分、浸潤麻酔の持続時間は短くなります。

一方で、骨が薄い分、伝達麻酔では大きな神経まで麻酔が効いてしまうことがあります。すると、麻酔の持続時間が大人よりも長くなることがあります。

3.麻酔を受けたあと気をつけること

多くの場合、治療後もしばらくは麻酔の作用が持続しています。その間、日常生活で気をつけたいポイントがいくつかあります。

3-1 食事

・感覚が鈍っているため、誤って唇や頬の内側を噛んでしまわないように気をつける
・熱いものが感じにくいため、やけどに気をつける
・子どもの場合は特に気をつけ、麻酔が効いている間はなるべく食事を控える

3-2 その他

・感覚がないことで舌、頬の内側、唇などをうっかり噛んでしまわないように気をつける
・麻酔が切れ始めると、かゆみや違和感が出ることがあるが、触ったり引っかいたりして、傷つけないように気をつける

歯茎を切り開くなどの治療で麻酔した場合、傷口からの出血をともなうことがあります。出血がある場合は次のポイントも気をつけましょう。

3-3 運動

・激しい運動やスポーツをおこなうと血行が促進され、傷口からの出血が起きやすい

3-4 アルコール

・お酒を飲むことで体調が悪くなるということはないが、血行が促進されることで傷口から出血しやすい

3-5 入浴

・長い間、入浴していると傷口からの出血が起きやすいため、短時間で済ませるようにする

4.麻酔が効きにくい2つのケース

次のようなケースでは、歯医者さんの麻酔が効きにくくなることがあります。

4-1 「皮質骨(ひしつこつ)」が硬くて厚い

歯を支えている骨の中でも特に硬いと言われているのが「皮質骨(ひしつこつ)」です。骨格がしっかりしている人や、皮質骨の厚みがある下顎への麻酔は、効きにくいことがあります。

その場合、歯根膜(しこんまく)に直接麻酔をする「歯根膜注射」をおこなうことがあります。

4-2 歯茎や歯の根が炎症を起こしている

炎症の内部は酸性の状態に近く、麻酔が効きにくくいとされています。そのため、麻酔をする部分に炎症を起こしていると、麻酔の作用が十分に得られないことがあります。

炎症を抑えることが優先されるため、日を改めて治療するケースも多くあるようです。

5.麻酔の副作用について

歯医者さんの麻酔による副作用は、大きな問題になるほどのものではないと言われています。

しかし、副作用がない薬はないと言われているように、少なからず副作用のリスクも考えられます。万が一、麻酔後に異変を感じた場合は、遠慮せずに先生に伝えましょう。

5-1 表面麻酔による副作用

歯医者さんで使われる表面麻酔には、アミノ安息香酸エチルという成分が含まれていることがあります。

アミノ安息香酸エチルの副作用として、じんましん、めまい、不安感、吐き気、頭痛などの症状が出ることがあるようです。

5-2 注射による麻酔の副作用

浸潤麻酔や伝達麻酔には、アドレナリンという物質が含まれていることがあります。

アドレナリンの副作用として、血圧の上昇や動悸といった症状が出ることがあるようです。特に高血圧や心臓疾患のある人に出ることがある副作用とされています。

症状が出た場合、安静にすることで軽減されると言われていますが、心配な人は麻酔の前に先生に相談しておくことをおすすめします。

6.麻酔が切れた後の痛みには鎮痛剤

治療によっては、麻酔が切れた後も痛みが続くことがあります。歯医者さんで処方された痛み止めを飲む、または市販の鎮痛剤を服用するといった方法で痛みの軽減が期待できます。

処方薬を使用する際は医師の指示に、市販薬を使用する際は薬剤師の指示に従い、服用するタイミングや用法用量を守って使用してください。

7.特殊な麻酔の方法

歯医者さんの麻酔には、「笑気麻酔(しょうきますい)」と「静脈内鎮静法(じょうみゃくないちんせいほう)」という特殊な麻酔があります。いずれも、治療の際の痛みや恐怖心を和らげる働きをします。

7-1 恐怖心も消せる笑気麻酔

低濃度の笑気と呼ばれるガスと、高濃度の酸素を吸うことでリラックスした気持ちになり、痛みが感じにくくなるほか、恐怖心が消える人もいます。

笑気麻酔はすべての歯医者さんで採り入れているわけではありません。また、笑気麻酔だけでは不十分な場合、浸潤麻酔といった局所麻酔と併用することもあります。

7-2 外科手術の際に行う静脈内鎮静法

笑気よりも鎮静作用が高い鎮痛薬を、点滴によって静脈内に投与する方法です。痛みや恐怖心が軽減されます。

笑気麻酔では十分な働きが得られないケースや、インプラント手術、親知らずの抜歯といった外科手術の際に使われることが多い麻酔です。嘔吐反射(おうとはんしゃ)が強い人にも向いているとされます。

静脈内鎮静法は薬剤が体に及ぼす影響が強いため、手術中は麻酔の専門医が付き添い、管理した状態でおこないます。また、麻酔が切れるまで1~2時間程度かかることがあるため、すぐに帰宅できないこともあります。

8.まとめ

普段あまり知ることのない麻酔の種類や効果、注意点など詳しく紹介してきました。知っておけば、治療前の不安や緊張が少し和らぎませんか?

麻酔の痛みが苦手な人は、先生に相談してみましょう。できるだけ痛みを抑えた方法を考えてくれるはずです。妊娠している、他に服用している薬がある、持病があるといった人は、事前に先生に伝えておきましょう。

コメント

塗布麻酔は表面だけなので、痛点に当たれば痛みを感じます。針のない麻酔は粘膜表面近くを麻酔薬の圧力によって浸潤させるため、ほとんど痛みを感じません。注射針の太さもこの頃はかなり細くなり、針のカットも工夫され、痛みを感じられないよう配慮されています。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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