受け口の矯正方法は大人と子供で異なる!治療法のメリット・デメリット・費用まとめ

受け口の矯正方法は大人と子供で異なる!治療法のメリット・デメリット・費用まとめ

上下の歯の噛み合わせが逆になる受け口の治療は、乳歯がある子どもの時期と、永久歯が生えそろった大人の時期で、治療方法が大きく異なります。この記事では、大人と子どもで違う治療法や費用(※)、メリットやデメリットについてまとめています。受け口の原因の一つに、「舌癖(ぜつへき)」が挙げられるため、自分でできる舌を使ったトレーニングについても紹介しています。このトレーニングは、治療の一環としてもおこなわれているものです。受け口が気になっている方や、受け口の矯正方法についてどんな方法があるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

※矯正料金に処置料を含んだ、総額費用を案内する歯医者さんもあります。総額制の場合、原則として提示金額のみで、追加料金がかかることはありません。矯正料金と処置料が分かれている場合、通院のたびに調整料といった費用が発生します。本記事では、矯正料金のみを費用として記載しています。詳しい費用に関しては、治療をおこなう歯医者さんに確認をすることをおすすめします。

この記事の目次

1.大人の受け口の矯正について

1-1歯列矯正(ブラケット矯正)

軽度の受け口の治療は、主にブラケットを使った歯列矯正となります。
ブラケット矯正は、一般的に顎の成長が止まり、噛み合わせが安定してからおこないます。
男子で18歳頃、女子で16歳頃が目安です(※)。

ブラケットとは、ワイヤーを固定するために歯に取り付ける金具のことです。
ワイヤーに力をかけ、受け口の原因となる歯の傾きやねじれを正し、歯を本来の位置に移動させます。

※【参考】日本頭蓋骨顎顔面外科学会「顎変形症」

【メリット】

  • 骨格のズレが小さい場合、歯列矯正のみで治療できます。
  • 外科手術のような身体的、経済的な負担が少なく済みます。

【デメリット】

  • 歯の表側にブラケットを装着するため、目立って見えることがあります。
  • 抜歯をともなうことがあります。
  • 治療期間が比較的長くなります。
  • 歯列矯正のみの治療をおこなっても、骨格の大きなズレは改善されません。

そのため、症状が軽度の場合にのみ検討されるようです。

【費用】

矯正治療は保険適用外(自由診療)となるため、10~150万円かかるのが目安です。

1-2外科手術

受け口の原因が骨格のズレや変形である場合、歯列矯正のあとに手術をおこなう流れが基本です。
まず、歯列矯正によって歯並びを整えたあと、手術(骨切り術※)によって上顎と下顎のズレを改善します。
手術は口の中でおこなうため、見た目に傷が残ることはありません。

骨格を移動させることで頬や鼻、唇といった顎以外の部分も変化することになり、顔の形もより自然になります。

※骨切り術とは、顎の骨を分割して移動させたり、切り取ったりする手術です。症状によって、切り取る骨は異なります。

【メリット】

骨のズレが大きく、歯列矯正と外科手術を併用した治療をおこなう場合は、顎変形症と診断され保険が適用されます。
そのため、費用を抑えて治療ができることがメリットです(※)。

(※)顎変形症の外科手術について
厚生労働省が定めた歯医者さんで、歯列矯正をおこなう必要があります。詳しくは、以下のサイトで確認することをおすすめします。

【参考】日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」

【デメリット】

  • 骨の成長が終了する年齢(17~20歳※)以降にしか、おこなうことができません。
  • 全身麻酔をともなう外科手術のため、まれに顔の麻痺や腫れ、知覚が鈍くなるなどの症状が出る場合があります。
  • 噛み合わせを優先した手術のため、本人にとって望ましい見た目となるとは限りません。

※【参考】大阪大学大学院 歯学研究科 口腔外科学第一教室「顎変形症外来」

【費用】

顎変形症の治療は、矯正治療と入院手術の両方に健康保険が適用されます。
矯正治療は20~30万、入院手術は20~35万(ともに3割負担)が、費用目安となります。
また、医療費控除(※1)や高額療養費制度(※2)が利用できるため、限度額を超えた分を請求すると払い戻されます。

医療費控除や高額療養費制度について、詳しくは以下のサイトを確認ください。

※1【参考】国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
※2【参考】厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

1-3マウスピース矯正

部分的に歯を移動させれば整えられる見込みのあるケースは、マウスピースでの治療が検討されることもあります。
反対に、マウスピース矯正での治療が難しいケースは、以下の通りとなります。

  • 受け口の原因が骨格にある
  • 歯列矯正に抜歯が必要となる
  • (マウスピースで動かせる範囲以上に)歯を大きく動かす必要がある

【メリット】

  • 透明な素材でできているため、装着していても目立ちにくいです。
  • 自分で取り外したり、装着したりすることができます。人と会うときや、大事なイベント事のときなども調整がしやすいでしょう。

【デメリット】

  • 大きく歯を動かす必要のある矯正には不向きです。
  • 決められた装着時間を守れないと、変化が出にくくなります。

【費用】

部分的な治療をするか、全体的に治療をするかで費用が異なりますが、15~120万円ほどを見込んでおきましょう。

2.子どもの受け口(乳歯)の矯正について

2-1マウスピースタイプ矯正装置による治療

子どもの受け口の治療には、就寝時にのみ装着するマウスピース型の矯正装置が用いられます。
3歳から使用可能で、1年間ほど使用するのが一般的です。
この装置を装着することで、上顎の成長をうながし、噛み合わせや舌の位置を改善していきます。

治療後、受け口の改善が見られない場合は、拡大装置を使用した矯正治療に移行します。
マウスピースタイプ矯正装置のみで、治療が完了するケースもあります。

【メリット】

  • 3歳くらいから小学校就学前の、子どもの受け口の治療に適しています。
  • 小学校就学前のなるべく早い時期から治療を始めることで、抜歯をすることなく歯を並べるスペースを作ることができます。
  • 受け口の原因になっている舌の位置を引き上げ、口腔筋(こうくうきん※)のバランスを調えることができます。

※口腔筋とは、食物を噛んだり、飲み込んだり、発音をしたりするのに必要な口周りの筋肉のことです。子どもの受け口は、舌たらずなしゃべり方や、食べ方にも影響するとされています。

【デメリット】

  • 3歳からつけることはできても、子どもが嫌がることがあります。
  • 装着中は話すことができません。
  • 寝ている間に装置が外れてしまうことがあります。

【費用】

5~15万円が費用の目安となります。

2-2拡大装置

拡大装置とは、顎の成長に合わせ、歯が並ぶスペースを広げたり、顎を広げたりする装置のことです。
スペースを作ることで、正しい位置に歯を並べられるようになります。

一般的に、拡大装置は自分で取り外すことはできません。3か月以上装着する必要があります。
上顎の成長は、10歳前後で終了すると言われています。
そのため、上顎が成長する6~8歳ごろまでには、治療を開始することが望ましいといえます。

多くの場合、拡大装置で顎を広げた後、永久歯が生えそろうタイミングで一般矯正に移行します。

【メリット】

  • 抜歯することなく歯列矯正ができる可能性が高まります。
  • 後戻り(※)の心配が少なく済みます。

※後戻りとは、矯正した歯が元の位置に戻ってしまうことです。

【デメリット】

  • 上顎拡大装置での治療後、ブラケットを使った矯正治療に移行することが多いようです。
  • 乳歯の段階で歯並びを改善しても、永久歯の歯並びが必ずしも良くなるとは限りません。本格的な矯正をするのは、永久歯が生えた後からの方が良いとする意見もあります。

【費用】

20~55万円が費用目安です。

2-3舌癖(ぜつへき)のトレーニング

舌癖とは、舌を歯の間から突き出す癖のことです。
受け口だけでなく不正咬合(※)の患者さんによくある癖の一つです。

受け口の治療をおこなっても舌癖が治らなければ、せっかくの治療も良い結果にはなりません。
トレーニング方法については3章で詳しく説明します。

※不正咬合とは、歯並びや顎の大きさの問題で、噛み合わせが悪い状態のことを指します。受け口も不正咬合の一種です。

3.自分でできる受け口改善「舌癖のトレーニング」

3-1舌癖とは

飲食物を飲み込むときに舌を突き出したり、舌で歯を押し出したりするクセのことを、「舌癖」といいます。
舌癖のある人は、いつも舌が上下の歯の間や下顎にあり、無意識に歯を押しています。
舌癖があると、噛み合わせを狂わせ、受け口をはじめとする咬み合わせ異常を引き起こしてしまいます。

正しい舌の位置は、上顎前歯の歯茎の裏側(この場所を、スポットと呼びます)とされています。
自分が普段、舌をどの位置につけているかを確認することで、舌癖があるかどうかを知ることができます。

3-2舌癖の原因

舌癖の原因には、以下の要素が考えられます。

  • 口呼吸の習慣(アレルギー性鼻炎、蓄膿症が原因である場合も含む)
  • 喉の病気(主に、扁桃腺肥大や、アデノイド肥大)
  • 舌小帯短縮症(舌の裏にある筋が短く、物理的に舌がスポットに当たらない)
  • 指しゃぶりの習慣

3-3舌癖のトレーニング(MFT)

MFTとは、「MYO FUNCTIONAL THERAPY」の頭文字を取ったもので、「筋機能療法」のことです。
正しくない舌の位置をそのままにすると、歯並びや咬み合わせにも関わることから、MFTで顔まわりの筋肉を鍛え、正しく機能させることを目的としています。

舌癖は、矯正をおこなうときに歯医者さんから指摘されることがほとんどです。
舌癖改善のためのMFTの一例を、以下に紹介します。
より詳しく知りたい方は、歯医者さんに相談してみましょう。

【方法①】

一日5分を目安におこないます。

1舌をスポットに置きます。
2舌の先がスポットに置かれていることを確認しながら、唾を飲み込みます。舌がスポットからずれている場合は、意識をしてスポットにつけます。

【方法②】

最初は5分から始めて、最終的には20分噛むことを目指します。

1スポットに舌の先を置き、上顎の犬歯(前から3番目の歯)の後ろでストローを噛みます。
2唇を閉じた状態で、ストローを噛んだ状態を5分間保ちます。

4.まとめ

受け口は、永久歯が生えそろった時期と、乳歯の時期とで治療法が異なります。
骨格のズレが大きければ、歯列矯正に併せて外科手術をおこなう必要があることがほとんどです。
その場合、顎関節症と診断され、健康保険が適用されます。
受け口が気になる方や、治療を検討している方は、歯医者さんを受診し診断を受けましょう。
そのあと、それぞれの治療方法や、メリット・デメリットについてもよく確認ことが大切です。

コメント

反対咬合(受け口)は骨格性の不正なことが多く、特に成人の場合は外科矯正となるケースもしばしばございます。矯正専門医や矯正化のある大学病院などにご相談に行くとよいでしょう。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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