虫歯や歯周病を招く歯垢の危険な実体と効果的な除去方法

虫歯や歯周病を招く歯垢の危険な実体と効果的な除去方法

皆さんは、歯垢がどうして歯に付着するのか知っていますか? 歯垢は、お口の中にいる細菌によって生み出されます。細菌は食事のときに出る糖分をエサにすることで、歯に白いネバネバとした歯垢を作り出してしまうのです。

歯垢は歯磨きで落とすことができます。ただ、すべてを取り除くのは難しく、磨き残しにより蓄積した歯垢が、虫歯や歯周病となって我々に襲いかかります。

この記事では、歯垢がお口の中でどれだけ有害なものなのかを説明していき、自分で行っていく歯垢除去のやり方から、歯垢が歯石に変化した場合の歯医者さんでの治療方法まで紹介していきます。ぜひ読んで参考にしてみてください。

この記事の目次

1.歯垢の実体と付随する悪影響

1-1 歯垢とは糖分により増え続ける細菌の固まり

『歯垢』は食べカスが付着してできたものではありません。「お口の中の細菌」が増殖した小さな半球状の固まりのことで、「プラーク」とも呼ばれています。成人の場合、お口の中には「300~700種類」の細菌が存在していて、その細菌が食事のときに出た糖分を取り込むことで歯垢は増え続け、食後およそ「8時間」で作られるといわれています。

歯垢は細菌の温床であり、歯垢1mgあたり「1億~10億個」の細菌がウジャウジャいるといわれています。気持ちが萎えるほどの驚愕な数の細菌ですが、毎日きちんと口内ケアを行っていれば、この細菌の数を減らすことができます。

1-2 歯垢は白く、時間が経つと黄色みがかった色に変化する

歯垢は白く、肉眼では見つけにくいのが特徴です。ただ、時間が経つと黄色みがかった「黄白色(おうはくしょく)」に変化し、舌で触るとヌルヌルとした感触があります。

歯垢を見つけやすくするために「歯垢染色剤」を用いる方法があります。歯磨きを行ったあとに染色剤を口に含むと、お口の中で取り残された歯垢が赤く染め上がる仕組みになっています。その部分を重点的に磨いてあげることで、お口の中を効率よくケアすることが可能なのです。

1-3 歯垢は「虫歯」や「歯周病」、「口臭」も発生させる

お口の中が清潔に保てていないと、歯垢が溜まり続け、「虫歯」や「歯周病」の発生リスクが生まれます。では、なぜ歯垢が蓄積すると虫歯や歯周病になってしまうのか?その答えをこれから説明していきます。

◆歯垢が「虫歯」の発生につながる理由

細菌の固まりである歯垢の中には、「ミュータンス菌」と呼ばれる虫歯を作り出す細菌も存在しているのです。虫歯になる原因の一つが砂糖などの「糖質」です。ミュータンス菌は、その糖質から「酸」を作り出し、歯の成分「カルシウム」や「リン」を溶かしてしまいます。これが「脱灰(だっかい)」と呼ばれる状態で、虫歯が発生したことを意味しています。歯垢の中にミュータンス菌が存在していることで、虫歯の発生につながってしまうのです。

◆歯垢が「歯周病」の発生につながる理由

歯垢の中には「歯周病菌」も存在していて、その菌が作り出した毒素により、歯周病が発生してしまいます。歯周病菌によって歯茎が腫れたり出血が起きたりします。歯周病菌に侵されたまま放置していると、最終的には歯が抜け落ちてしまうことになります。

◆歯垢が「口臭」を発生させる理由

歯垢の中に存在する細菌はガスまで発生させてしまいます。そのガスが「口臭」の原因になっている可能性があります。また、虫歯や歯周病によっても口臭は発生してしまいます。

口臭発生の理由はさまざま考えられますが、お口の中に歯垢が溜まって不潔な状態であれば、必然的に不快な口臭が発生していると考えるべきでしょう。お口の中を清潔に保つことは、対人関係の上でも大切なことです。口臭が原因で、相手との関係が絶たれてしまうこともないとはいえません。口内環境の整備は、大人として“最低限のマナー”であるといえます。

「口臭対策」について詳しくは『緊急時の口臭対策と臭いの根本原因を特定し解消する方法』を参考にしてください

1-4 歯垢は重篤な病気も誘発する

もし歯茎が出血を起こしている場合、その血液から身体の中へと歯垢の菌が入り込むと、「心筋梗塞」や「脳梗塞」といった命に関わる重篤な病気が引き起こされる可能性があります。また、肺や気管支に入り込んだ場合は「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」になる可能性もあるので、お口の中の健康は、身体の健康へと密接に関係してくるので注意が必要なのです。

2.歯垢は『歯石』になると悪影響をもたらす

2-1 ザラザラした歯石が歯垢の“足場”となる

歯垢は“48時間”経過すると、『歯石』へと変化します。つまり「2日間」で石のような固まりが歯に付着してしまうのです。ただ、歯石自体に害はなく、ザラザラした歯石が歯垢の“足場”となるかたちで付着するので、歯垢が溜まりやすくなってしまうのです。

歯石に直接的な原因はないにせよ、歯垢を溜めてしまう要因を作ってしまっていることは事実です。それゆえ、お口の中に歯石を残すことは、オーラルケアにとっては大きなマイナス要素となってしまいます。

2-2 歯石になる前に歯垢を除去するのが効率的

固くこびり付いてしまった歯石は、自宅で行うブラッシングでは除去することができません。歯石になる前に歯垢を除去することが、効率よいケアの仕方であるといえます。歯垢が歯石に変化する前に、毎日のブラッシングでしっかりと歯垢を除去していきましょう。

3.歯垢を除去するために行う正しいケアの方法

3-1 歯垢が溜まりやすい場所を歯ブラシで重点ケア

歯石になる前に歯垢を除去するには、磨き残しを減らす努力をしなければなりません。そのためには、ただ闇雲にブラッシングをしていては、細部の歯垢を除去することはできません。

まずは、歯垢が溜まりやすい場所をしっかり把握し、正しいブラシングを行ってみてくだい。それではまず、お口の中の歯垢が溜まりやすい場所を詳しくお伝えしていきます。

◆イラストの黄色い部分が「歯垢が溜まりやすい」場所

「歯垢が溜まりやすい」場所

歯垢が溜まりやすい場所は、上記イラストの黄色く塗られた部分になります。普段の歯磨きでおろそかになりがちな部分ですので、自分の今までの歯磨きを省みて、不十分だったことに気づくかもしれません。歯垢が溜まりやすい場所をしっかり磨いてあげることは、虫歯や歯周病を防ぐことにつながっていきますので、ぜひ注意深く磨いてみてください。

◆歯ブラシを上手に使って歯垢を除去しよう!

歯垢が溜まりやすい場所がわかったら、歯ブラシを上手に使って磨いていきましょう。注意するべきポイントは、歯ブラシの『当て方』、『力の加え方』、そして『動かし方』です。この3つを強く意識して磨いてみてください。歯垢をきちんと除去できていれば、歯の表面がツルツルになったことを実感できます。それでは、歯ブラシでの正しい歯垢の落とし方をイラストで説明していきます。

歯ブラシの「当て方」は歯と歯茎の境目を「45度」に当て、細かい動きで歯垢を落とす

歯ブラシの「当て方」は歯と歯茎の境目を「45度」に当てる

奥歯の噛み合わせ部分に対しては、毛先がつぶれないように軽い力で磨く

奥歯の噛み合わせ部分に対して軽い力で磨く

歯の表面は、歯1~2本を小刻みに磨き、「5~10mm」の幅を意識して磨く

歯の表面は、歯1~2本を小刻みに磨く

3-2 歯垢除去に有用な“おすすめ”歯磨き粉2選

毎日のブラッシングに歯磨き粉は欠かせないという方は多いと思います。ただ、どんな歯磨き粉を使えば歯垢をしっかり除去することができるのか、薬局で悩んだ挙句、結局は「お買い得品」を購入して済ませてはいませんか?

歯磨き粉は、自分のお口の中の状態を確かめてから、必要な要素が配合されているものを選んで購入しましょう。「お買い得品」も確かに嬉しいですが、毎日の歯磨きを有意義なものにしてくれる製品をぜひチョイスしてみてください。

◆歯垢除去と歯茎の炎症にもアプローチする歯磨き粉

この記事内でおすすめしたいのが、歯垢除去に重点を置いていて、さらにその先の、歯周病の改善も目指せる歯磨き粉です。

虫歯予防のための「フッ素」が配合されているのはもちろん、「エクストラファインパウダー」と呼ばれる成分が多く含まれているものがおすすめです。

エクストラファインパウダーは、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)に入り込んで、すみずみまで歯垢を除去してくれます。また、「IPMP(イソプロピルメチルフェノール)」によって「歯肉炎」の原因菌を殺菌し、MAG(グリチルリチン酸モノアンモニウム)による抗炎症作用で「歯槽膿漏(歯周病)」の予防にも役立ちます。

 

◆歯周ポケットに入り込み浸透殺菌する歯磨き粉

歯周ポケットに入り込んで、歯周病菌の殺菌作用が期待できる「IPMP(イソプロピルメチルフェノール)」の成分が配合されている歯磨き粉もおすすめです。
また、抗炎症成分として「トラネキサム酸」が配合されている商品もありますが、これは歯茎の腫れや出血を防いでくれるのでより良いです。その他、「アラントイン」も配合されていると、歯茎の細胞を活性化させ、組織の修復を行ってくれるので、歯周病になるのが心配で歯垢の中に存在している歯周病菌にアプローチする歯磨き粉を探している方や歯茎の健康が気になる方には特におすすめです。

 

3-3 「デンタルフロス」や「歯間ブラシ」が歯垢除去に有用

デンタルフロスと歯間ブラシは、歯磨きをしたあとに行うとよいといえます。歯ブラシだけでは、歯の隙間にある歯垢を除去することが難しいため、歯間部をきれいに掃除できるデンタルフロスと歯間ブラシは、毎日のオーラルケアに欠かせない「デンタルグッズ」なのです。

デンタルフロスも歯間ブラシも、歯間部にゆっくりと動かしながら挿入していきます。初めて使う方には、持ち手が付いていて使いやすい「ホルダータイプ」のデンタルフロスがおすすめです。

初心者におすすめの「ホルダータイプ」のデンタルフロス

ホルダータイプのデンタルフロス

4.『歯石』は歯医者さんで除去してもらう

4-1 超音波振動で歯石を除去できる

お口の中に付着した歯石は、歯医者さんで取り除いてもらいましょう。歯医者さんでは「スケーリング」というやり方で歯石を除去していきます。「超音波」の振動を与えながら、歯石を砕いて除去する治療を行ってくれます。歯茎の上に付いた歯石ならば、この方法ですぐに取り除くことが可能です。

4-2 3ヶ月に1回の定期健診で『歯石除去』の負担を減らす

知らないうちに歯石ができてしまっていても、歯の定期健診を行っていれば、歯石も柔らかい状態で除去することが可能です。治療時の負担も軽減できるので、「3ヶ月に1回」のペースで定期健診を受けることをおすすめします。

5.まとめ

歯垢とは細菌の固まりであり、その中には虫歯や歯周病を招く細菌が存在しています。よって、歯垢がお口の中で溜まり続ければ、虫歯や歯周病になるだけでなく、口臭の発生や命の危険が及ぶ病気まで誘発してしまう可能性があるのです。歯垢を落とすには、この記事で紹介した正しいブラッシングを実践し、デンタルフロスや歯間ブラシを用いて対策を講じましょう。

経歴

平成13年 国立 長崎大学歯学部 卒業・同大歯科補綴学第一講座 入局
平成16年 歯学博士号取得
平成17年 野田ファミリー歯科 入局
平成23年 あきる歯科医院 開院/院長就任

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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