いくらかかるの?インプラント“費用”について解説

いくらかかるの?インプラント“費用”について解説

失った歯の機能を取り戻すためのインプラント治療は、我々にとって身近な治療法として定着しつつあります。しかし、その治療に掛かる費用について、はっきりとイメージがわく人は少ないのではないでしょうか。

『インプラントに掛かる費用の相場は一体いくらなのか?』『格安インプラントを受けるのは危険なのか?』この記事では、インプラントの費用に関する悩みをスッキリさせてくれる内容が満載です。

また、『インプラントの費用は地域によっても違う!』といった、さまざまな側面からも費用についての見解を示しています。読み終わったあとに不安を払拭していただける内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の目次

1.インプラント治療に掛かる費用の実態を詳しく知っておこう!

1-1 インプラントは重い外傷や先天性の病気以外は保険が適用されない

歯医者さんで初めてインプラントをすすめられて、料金にびっくりされる方は多いかと思います。インプラント治療は保険が適用されないのが基本で、医療機関が自身で費用を決める「自由診療」での支払いなのです。

インプラントは失った歯の代わりとして、人工の歯根や歯冠などを使って自然に近い歯の状態で機能させる治療法です。そのために保険の適用はできないとされているわけです。

ただ、2012年4月より、国が定めている病気や外傷などで広範囲に顎の骨を喪失してしまった場合に限って、『インプラント義歯治療』として保険適用が認められるようになりました。インプラント義歯治療とは、顎の骨にインプラントを埋め込んで土台を作り、その上に義歯を装着させる治療法です。

ではここで、インプラント治療に保険が適用される場合(インプラント義歯治療)と、されない場合の条件を表で詳しく紹介しますので、ご覧ください。

自由診療となる場合(保険外治療)保険診療となる場合(入れ歯やブリッジによる治療では回復が見込めないことが条件)

・虫歯や歯周病、外傷での歯の喪失

・歯周病や加齢によって、顎の骨が痩せてきてしまったことによる歯の喪失

・腫瘍や顎骨髄炎(がくこつずいえん)による病気

・事故の外傷による広範囲にわたる顎の骨の喪失

生まれつきの病気で、顎の骨が1/3以上連続して欠損してしまっている状態

・顎の骨が形成不全の状態

 

上記の表で示した通り、インプラントに保険が適用される条件は、「入れ歯」や「ブリッジ」による治療で回復が見込めないことに加え、事故や生まれつきの病気などでやむを得ない場合に限ります。つまり、ほとんどの場合、インプラントで保険が適用されることはないといえます。

1-2 “歯1本あたり”埋め込むのにかかる費用はおよそ『3040万円』

保険適用外のインプラント治療に支払う費用の平均は、“歯1本あたり”およそ『30~40万円』だといわれています。この費用の相場は、都市部と地方で違いが生まれてきますが、あくまできちんとした治療を受けることが前提でこの値段がはじき出されています。

ではなぜ、これほどの料金が掛かってしまうのか?いまからその理由を詳しく説明していきます。

※費用の金額については、Webサイトの情報からランダムに抽出した金額を参考にしています

1-3『30万円~』の費用は妥当なのか?ブリッジ治療と比べて考えてみる

インプラントとよく比較される歯の修復方法として、「ブリッジ」と呼ばれる治療法があります。ブリッジとは失った歯の両隣の歯を削り3本分の人工の歯を被せることで、抜け落ちた歯を文字通り“橋渡し”させて行う治療法です。両隣の歯は橋げたの役割を果たす必要があることから、健康で丈夫な歯でなければなりません。費用は保険適用で『2~3万円』ほどかかります。

ブリッジは周囲の歯を削るだけでなく、場合によっては神経を抜く作業も行います。削って橋げたにした歯に負担がかかり、虫歯や歯周病になる可能性もあります。それに対してインプラントは、健康な歯も削らずに失った歯の部分だけの修復で済むという大きなメリットがあります。

また、ブリッジは使用する詰め物や見ための美しさなどを重視すると保険が適用されなくなり、金額は10倍の『20~30万円』ほどの費用がかかります。これを踏まえて考えれば、保険適用外のインプラントの平均金額が『30万円~』であっても、妥当な金額であるといえるのではないでしょうか。

インプラント治療に対するそれぞれの価値観の相違はあると思います。ただ、我々が食生活を営む上で大切な歯の治療です。失った歯の機能を取り戻すために行うインプラント治療は、より自然に元々あったような歯の状態で機能させることが可能です。それゆえ、ある程度の高額な費用はどうしても必要となってくるのです。

1-4 地域によっても違う!都心部の平均費用は『39万円』

インプラントに掛かる費用は、地域によってもその平均金額が異なってきます。東京都心部では、インプラント治療に掛かる費用の平均が『39万円』といわれています。これは単に都心部のテナント料が高いことが原因で、治療費にこの分を上乗せしていることから平均費用が高いのだと思われます。

つまり、都心だからといって特別な治療法がなされているというわけではありません。ただ地方に比べ、インプラント治療に知見を持った医院を選択できるというメリットがあるのは事実です。それでは地域別にみた治療費の平均金額を表で確認してみましょう。

地域平均費用
北海道地方32万円
東北地方34万円
北陸・甲信越地方33万円
関東地方37万円
中部・近畿地方37万円
中国・四国・九州地方35万円

 

上記の表を見ても、東京都心の平均費用『39万円』を含む関東地方や、中部・近畿地方といった主要都市の平均はやはり高めとなっています。このように地域によって費用の差が生じてきますが、どの地域の平均も『30万円台』であることは同じであるため、インプラントの治療費の平均が『30万円~』ということが裏づけられた結果となりました。

※費用の金額については、Webサイトの情報からランダムに抽出した金額を参考にしています

2.インプラント治療に掛かる費用の内訳

2-1 費用の内訳についてきちんと知っておく

よりよいインプラント治療を受けるためには、治療に掛かる費用の内訳も事前にわかっていることが望ましいといえます。

これから、インプラント治療にかかる費用のおおよその内訳を下記の表で紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

治療内容費用
治療前の精密検査と診断料1万5千円~5万円
人工の歯のもとになる素材の費用10万円~15万円
インプラントを埋め込む手術代10万円~38万円ほど
治療後のメンテナンス5千円~1万円

 

※費用の金額については、Webサイトの情報からランダムに抽出した金額を参考にしています

2-2 治療に使われる被せ物の費用についても確認しよう!

紹介したインプラント治療に掛かる費用の内訳は、治療に使われる素材の値段や医師のスキルによっても違いが生まれます。例えば、使用する素材(被せ物)が「ジルコニアセラミッククラウン」であると、高い場合は『20万円』の費用が掛かる場合もあります。

「ジルコニアセラミッククラウン」とは、人工のダイヤモンドを使用した被せ物で、変色や割れる可能性も低く、自分の本当の歯のような自然な色とツヤを再現できる被せ物といえます。ただ、治療費が高額なため、自分の口内の状態を見極めながら、医師と相談して自身にあった治療法を決めることが第一の選択だといえます。

では参考までに、インプラント治療に使われる被せ物の特徴と、おおよその費用を表で紹介します。

被せ物の種類主な特徴費用
ジルコニアセラミッククラウン変色や割れる可能性も低く、自然な歯の色とツヤを再現できる歯1本あたり『9~20万円』
オールセラミッククラウンセラミックのため割れる可能性は高いが、自然な歯の色とツヤをより再現できる歯1本あたり『7~17万円』
ハイブリッドセラミッククラウン年月が経つにつれツヤは劣化してしまうが、オールセラミックよりも柔らかく、費用も抑えられる歯1本あたり『4~12万円』
メタルボンド金属のため強度があるが、色や透明感はオールセラミックよりも劣る歯1本あたり『5~15万円』
ゴールドクラウン硬さは自身の歯と同じ硬さで馴染みやすいが、見た目の自然さに欠ける歯1本あたり『4~15万円』
オーバーデンチャー(インプラント義歯)顎の骨にインプラントを埋め込み、プラスチックでできた取り外し可能な総入れ歯をはめ込むやり方『20~35万円』(「総入れ歯」と「入れ歯」を固定させる部品を含めた費用)

 

※費用の金額については、Webサイトの情報からランダムに抽出した金額を参考にしています

3.インプラント治療に掛かる費用の負担を少しでも和らげる方法

3-1 医療費控除を申告する

インプラント治療は『医療費控除』の対象となります。医療費控除とは、一年間(1/1~12/31)で生計を共にしている親族の医療費が10万円を超えた場合、税務署に申告することで一定の還付金が受給されたり、住民税を減らすことができるというものです。

医療費控除は納税額から還付されるので、所得税や住民税を納めていることが条件となります。医療費控除の対象額は、『実際に医療機関に支払った医療費の合計』-『保険金などで補填される金額』-『10万円(一年の総所得が200万円未満の場合は“総所得金額×5%”)』によって割り出されます。

自分がもし医療費控除の対象だった場合は、申告することで治療費を安く抑えることができますので、ぜひ活用してみましょう。

3-2 “分割払い”ができる「デンタルローン」を活用する!

平均費用が『30万円~』のインプラント治療は、やはり気軽に一括で払える金額ではありません。そんなときに活用して欲しいのが「デンタルローン」というシステムです。

デンタルローンとは、歯科治療に掛かる費用を患者さんに代わって信販会社が立て替えを行い、患者さんは信販会社に対して、治療費に手数料をプラスした金額を分割で支払っていくというものです。

信販会社によって異なりますが、最大で『84回払い』が可能で、利用額の上限は最大で『500万円』となっています。申し込み方法ですが、デンタルローンを取り扱っている信販会社に直接申し込むか、デンタルローンを取り扱っている歯医者さんからでも申し込みができる場合がありますので、事前に確認してから申し込みを行いましょう。

4.『インプラント10年保証』を利用しよう!

『インプラント10年保証』とは、“第三者の保証機関”として認められた歯医者さんのみで受けられる制度のことです。治療後に何か不具合が発覚した場合、治療が終了した日から10年間は定められた金額内で再治療の保証を行ってくれます。

保証の限度額については、インプラントの本体が『20万円』、人工の歯に対して『10万円』まで無償で再治療が行えます。限度額を超えた場合に関しては、自己負担になる可能性があります。

『10年保証』を行ってくれる歯医者さんは全国にあり、対象の歯医者さんで保証登録申請書にサインすれば、治療後に「10年保証書」というものを発行してくれます。10年保証を使えば、患者さんにとって予知できなかった事故やトラブルによってインプラントが破損した場合も、保証してくれるのです。

5.インプラント治療を受ける歯医者さんの選び方

5-1 「専門医」のいる歯医者さんを選ぶ

インプラントは自分の大切な歯を取り戻すための治療であり、高額な費用を支払うのですから、納得して任せられる歯医者さんを選ぶのは当たり前です。歯医者さんを選ぶ際には、「専門医」の資格を持っている歯医者さんかどうか、というのも大きなポイントとなります。

専門医という資格ですが、これは『日本口腔インプラント学会』が、インプラントにおける治療の知識や経験を有すると認めた歯科医師に与えるもので、認定資格を満たし、試験に合格したものだけが専門医としての認定書が交付されます。

専門医の資格は、インプラント治療を行う上でのよりよい治療法を見つけ、正しい判断ができる医師であるということを証明したものです。専門医の資格は有効期限が5年と決められていて、更新するためには、同学会での研究や治療内容の発表、研修への参加などが必須となっています。

専門医の資格を有する医師がいる歯医者さんかどうかは、医院のパンフレットやホームページなどを参考にして調べるのがいでしょう。専門医というのはあくまで歯医者さん選びの一つの目安ではありますが、インプラント治療に高い関心を持ち、向上心を磨いてきた医師だからこそ持てる資格であるので、判断基準の一つとして考えてみてください。

5-2 一般の歯科医院と大学病院で受ける治療の違い

インプラントは「一般の歯科医院」と「大学病院」とでは治療に違いがあるのか、また、どちらで受けた方が良いのか、という疑問にこれからお答えします。

一般の歯科医院の場合は、自分の都合に合わせて予約が取れたり、仕事帰りに通えるなどのメリットがあります。インプラントの治療後に定期的にメンテナンスに通う場合は“近所の歯医者さん”の方が通院しやすいといえます。

ただ、病気や事故によって顎の骨を1/3以上失った場合に行う『インプラント義歯治療』は、入院するためのベッドが20床以上あって、一定の治療経験を有する医師がいることが条件であることから、大学病院での治療が望ましいといえます。

大学病院の場合は施設の大きさや設備の充実さが大きな魅力であると思いますが、それに伴って、一般の歯科医院よりも医師のスキルが高いかというと、そういうわけではありません。どちらで治療を受けるかは、医師との信頼関係はもちろん、継続して順調に治療が進めていけるところを選ぶべきだと思います。

また、治療に掛かる費用でいうと、一般の歯科医院と大学病院で金額の差はなく、『30~40万円』という相場は変わらないのが現状です。

6.まとめ

インプラントの費用の相場は『30万円~』ということがわかりました。費用のおおよその内訳も紹介し、さらに中身を深く掘り下げていくと、地域による金額の違いや保証制度、医療費控除やデンタルローンを利用した治療の受け方が見えてきます。料金に惑わされず、自分にとってより良いインプラント治療のかたちを見つけることが大切です。

プロフィール&経歴

出身校:日本大学大学院松戸歯学研究科
歯科医暦:13年
歯科医師を目指したきっかけ:元々細かい作業が好きだったのと、大学時代アルバイトで歯科医院で働いた事があり、そこから歯科の臨床・教育・研究をされている姿を見てから、臨床の勉強をしたい!と強く思ったためです。
歯科医師のやりがい:歯医者にいらっしゃる方は、痛い方や悩みがある方、解決策がわからずお困りになって歯医者に来られます。私たちは専門でやっているので、歯科のことに関しては対応できることが多いです。ずっと歯科専門でこだわって勉強してきたので、困っている方の役に立つということがとても嬉しく、やりがいを感じます。

2004年3月 日本大学松戸歯学部卒業
歯科保存学入局
千葉県の歯科医院、都内の歯科医院を勤務
松島歯科にて副院長を努める
2014年3月 日本大学大学院松戸歯学研究科卒業
日本大学松戸歯学部口腔病理学非常勤講師

2014年10月2日 丸の内 帝劇デンタルクリニック開院
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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