「歯が浮く感覚」は口腔トラブルの初期症状!?基本的な治療法まとめ

「歯が浮く感覚」は口腔トラブルの初期症状!?基本的な治療法まとめ

痛みがあるわけではないけれど、歯が浮くような感覚がある…。そのような悩みを持っている方はいませんか? 「歯が浮く」とか「歯が下から押されるような感じ」がする場合、歯の根元に何らかの問題が起きているのかもしれません。

こちらの記事では、「歯が浮く感覚」を引き起こす症状について解説しています。中には「悪化すると、歯を失うリスクがある症状」も含まれていますので、早めに歯医者さんを受診するようにしましょう。

この記事の目次

1.なぜ「歯が浮く感覚」が生じるのか?

歯が浮くような感覚があるときは、たいてい「歯根膜(しこんまく)」の付近に問題が起きています。歯根膜は別名で「歯周靭帯(ししゅうじんたい)」とも呼ばれる「繊維の集合体」です。歯を支える骨を「歯槽骨(しそうこつ)」と呼んでいますが、この歯槽骨と歯の隙間を埋めているのが歯根膜です。

歯根膜の主な役割は2つあります。1つは、「歯にかかる圧力を緩和するクッションの役割」です。そして、もう1つは「噛んだ食べ物の固さを判別する感覚器官の役割」になります。歯の根っこ部分にある「歯根膜、もしくは歯根膜周辺」に問題が起きると、歯が浮くような感覚が生じます。

2.「歯が浮く感覚」を引き起こす4つの症状をチェック!

どのような口腔トラブルが起こると、「歯根膜・歯根膜周辺の炎症」が生じるのでしょうか?この章では「歯が浮く感覚の原因となる症状」を確認してみたいと思います。最終的には歯医者さんで検査を受ける必要がありますが、「歯が浮く感覚の原因が知りたい」というときの参考にしてください。

2-1 根尖病巣(こんせんびょうそう)

虫歯を放置していると、いずれは虫歯菌が神経に達してしまいます。そして、神経が死んでしまうと、歯の内部は「ただの空洞」になります。この状態になると、歯の中は「虫歯菌の住み処」のようになってしまいます。

歯の内部には「神経の入っている部屋(歯髄腔)」があり、歯髄腔は「歯の根っこにある細い管(根管)」につながっています。神経が死んでしまうと、歯は虫歯菌に抵抗できませんから、歯髄腔から根管にかけて汚染されることになります。結果、虫歯菌は根管にまで入りこみ、歯の根元に到達します。

虫歯菌が歯の根元にまで感染すると、歯の根元(=歯根膜の近く)で炎症が起こります。歯の根元で炎症が起こることを「根尖病巣」と呼びます。内部が腫れることにより、内側から歯が押し出される方向に圧力がかかるでしょう。結果、「歯が浮く感覚」に悩まされることになります。

基本な治療法…「感染根管治療」

根本原因は「虫歯が悪化して、虫歯菌が歯の根元にまで拡大したこと」です。それならば、歯の内部を無菌化することで問題が解消するはずです。そこで、歯の内部を無菌化するための「感染根管治療」をおこないます。

感染根管治療は、「リーマー」「ファイル」といった針状の器具を用いて、歯の内部(歯髄腔から根管にかけて)を清掃する治療です。虫歯菌に感染した部分を除去して、内部に薬剤を詰めていきます。根管内まで無菌化できれば、炎症を起こしている原因菌がいなくなるので、根尖病巣は解消します。

2-2 歯根嚢胞(しこんのうほう)

「歯根嚢胞」も、虫歯を放置することで生じる病変です。神経が死んでしまうほどの深い虫歯では、虫歯菌が歯の根元にまで感染します。結果、歯の根元に炎症が起こるわけです。ここまでは根尖病巣と同じです。

歯根嚢胞の場合、炎症に起因して膿が溜まります。そして、根元付近の歯茎内部に、膿の入った袋状の病変が生じます。たいてい、膿はだんだん増えていき、膿の量に比例して嚢胞も大きくなっていきます。嚢胞が大きくなると、歯の根元を内側から圧迫するようになり、結果的に「歯が浮く感覚」が生じるわけです。

基本的な治療法…「感染根管治療」or「歯根端切除術」

歯の内部を無菌化すれば、根元に感染した虫歯菌を除去することができます。そこで、軽度の歯根嚢胞には根管治療をおこないます。虫歯菌に感染した部分を取りのぞき、薬剤を詰めて無菌化するわけです。重度の虫歯を治療するときのベーシックな方法です。

しかし、重度の歯根嚢胞になると、歯の上部から削るだけでは改善しません。その場合、外科的治療をおこないます。具体的には、歯茎を切開して歯の根っこを一部切除します。その上で、根元側からも薬剤を詰めて、根管を無菌化するわけです。この方法を「歯根端切除術」と呼びます。

歯根端切除術でも無菌化できない状態の場合は抜歯になります。

2-3 歯周病による炎症

歯周病の原因は、「歯周ポケット(歯と歯茎の隙間)」に歯周病菌が入りこむことです。歯周ポケットに歯石が溜まると、歯石が歯周病菌の住み処になります。歯周病菌の働きで歯茎・骨が溶かされるので、悪化すると歯を失う恐れもあります。

歯周病は「歯と歯茎の隙間で起こる炎症」です。炎症が起こると歯茎が腫れますから、歯を押し出す方向に圧力がかかることがあります。この圧力が「歯が浮く感覚」の原因です。

基本的な治療法…「スケーリング」or「ルートプレーニング」など

歯周病を改善するには、歯周ポケットの歯石除去が必要です。そこで、「スケーラー」「キュレット」などの器具で、歯周ポケットを清掃する治療がおこなわれます。スケーラーを使う治療を「スケーリング」、キュレットを使う治療を「ルートプレーニング」と呼んでいます。

歯石取りができる深さに差があり、スケーリングは浅い位置、ルートプレーニングは深い位置を清掃します。そのため、軽度の歯周病にはスケーリング、中等度にはルートプレーニングが選択されます。

重度の歯周病になると、歯茎を切開して歯石除去をおこなうなど、外科的治療が必要になります。歯周病は自覚症状がないまま進行するので、歯医者さんで定期健診を受けておくのがおすすめです。

2-4 歯ぎしり・固いものを噛みすぎたことによる「歯根膜炎」

歯ぎしりを繰り返したり、固いものを無理に噛んだりしていると、歯根膜がダメージを受けてしまいます。その結果、歯根膜が炎症を起こしたのが「歯根膜炎」です。歯根膜炎は「噛んだ拍子に痛む」「歯が浮く感覚」の2つが主な症状とされています。

歯根膜に炎症があると、血液が集まってきて「うっ血」を起こします。結果、歯根膜の厚みが増して、歯が押し出される方向に圧力がかかるわけです。

ちなみに歯ぎしりには3つの種類があります。一般には「歯を左右にこすりあわせること」を歯ぎしりと呼んでいますが、これは「グランディング」という種類の歯ぎしりです。そのほかに強く噛みしめる「クレンチング」、カチカチと何度も噛み合わせる「タッピング」があり、いずれも歯根膜にダメージを与える習慣です。 

基本的な治療法…マウスピース

本人が意識的に歯ぎしりをやめられれば、それで良いのですが、クセになっている場合は歯医者さんを受診したほうが良いでしょう。また、寝ている間に歯ぎしりをしているケースも多く、これは本人の努力だけではどうにもなりません。そこでマウスピースを装着して、「歯ぎしりの負担が歯にかからないようにする」という方法があります。

3.まとめ

たとえ痛みがなくても、大きな問題が隠れていることがあります。「歯が浮くような感じがする」という場合、なるべく早めに歯医者さんを受診したほうが良いでしょう。特に「根尖病巣」「歯根嚢胞」は「神経を失った歯に起こる」という共通点があります。「神経のない歯」に違和感を覚えたときは、特に注意が必要です。

経歴

出身校(最終学歴): 北海道医療大学 歯学部
歯科医暦:24年目
歯科医を目指したきっかけ:父親が歯科医で、背中を見て歯科医になろうと思った。

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

歯の教科書では、読者の方々のお口・歯に関する“お悩みサポートコラム”を掲載しています。症状や原因、治療内容などに関する医学的コンテンツは、歯科医師ら医療専門家に確認をとっています。

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