虫歯治療で銀歯にするメリット・デメリットと銀歯以外の対策

虫歯治療で銀歯にするメリット・デメリットと銀歯以外の対策

虫歯になってしまったらどうしますか? かつては安くて丈夫な銀歯が主流でしたが見た目を気にする方が増えた現在は、値段は高くてもセラミックを選ぶ方も増えています。自然な白さで本物の歯と見分けがつきません。

見た目だけではなく将来的に見ても銀歯よりセラミックの方が2次カリエス(虫歯)や金属アレルギーにかかるリスクが減らせることも理由の一つです。値段よりも長期的な安定をとる方が増えているのです。

また、詰めた物が取れてしまった非常事態にはどうしたら良いのでしょうか? 絶対にやってはいけないこと、逆にこれだけはやった方が良いことが何点かありますので、いざという時に役立ててください。

この記事の目次

1.虫歯治療で銀歯にするメリットとデメリット

虫歯治療で使われる銀歯は、『12%金銀パラジウム合金(銀歯)合金』です。セメントを使って歯に装着させ、保険診療なので値段も手頃です。

しかし装着後、時間が経つと歯や歯茎が変色してしまうこともあります。比較的、耐久性に優れていますが、天然の歯よりも強度があるため対合歯(たいごうし)を傷めてしまうことがあります。また、金属アレルギーの原因となってしまう可能性もあります。

この章では、虫歯治療で銀歯にすることのメリットとデメリットをまとめてみました。

1-1 銀歯にすることのメリット

強度があり保険が使える

金属ですので耐久性があり欠けたりすることなく長持ちします。また、保険が使えるので値段が安く抑えられます。

1-2 銀歯にすることのデメリット

見た目が目立つ

その名の通り「銀」色なので白い歯が並ぶ中、目立ってしまいます。それが気になって大きな口を開けられないという方も少なくないのではないでしょうか。また、金属成分が溶け出して歯や歯茎が黒く変色してしまって、更に目立つこともあります。

金属アレルギーの心配がある

金属を口の中に入れるわけですから金属アレルギーのリスクがあります。口の中には水分があるので金属が溶け出してしまいます。それを唾液と共に飲み込むと体内に蓄積されていき、アレルギー反応を引き起こすことがあります。

アレルギーですから、今まで大丈夫だったとしても、ある日突然なってしまうこともあるのです。口の中が赤くなったりするだけでなく、手や足など直接触れてないところに症状が出ることもあります。症状も軽い方から重い方までさまざまです。

銀歯の下で虫歯になりやすい

実は銀歯と自分の歯をセメントで「つける」と言っても「接着」しているわけではなく「隙間を埋めているだけ」なのです(「合着」)。しかもセメントは徐々に溶け出していくので当然隙間が出来ていきます。そこへ汚れや細菌が入り込み、虫歯になりやすくなってしまうのです。

2.銀歯を使わずに虫歯を治療する方法

虫歯になってしまったら、その部分を削ります。軽い虫歯であれば詰め物、酷い場合には被せ物をすることになります。

保険診療で負担も少なく、強度のある「12%金銀パラジウム合金(銀歯)」となるのがベーシックですが、最近ではセラミックを使った、見た目のきれいさも考慮した治療法が行われています。

2-1 セラミック/ハイブリッドセラミック

「ハイブリッドセラミック」はセラミックとレジン(プラスチック)で出来ています。自由診療なので値段が高くなりますが、天然の歯に近い仕上がりになります。また、時間が経ってもほとんど変色しません。天然の歯と近い強度なので、天然の歯を傷めることもありません。ただしその分、金属に比べると耐久性に劣ります。

2-2 コンポジットレジン(プラスチック)

プラスチックの材質です。「お金はかけたくないけど、銀歯も嫌」という場合、保険診療で白い歯に出来ます。ただし強度が弱いので奥歯のかぶせ物には使用できません。時間が経つと変色してしまうこともあります。奥歯ではない歯の小さな虫歯に適しています。

2-3 金

金合金(きんごうきん)や白金加金(はっきんかきん)でできています。本物の歯に近い硬さなので他の歯を傷めないことや金属アレルギーになりにくいという点で優れていますが、値段が高くなります。

3.セラミックのメリット・デメリット

この章では、銀歯よりも見た目と耐久性に優れたセラミックを使った虫歯治療について、メリットとデメリットをお伝えしていきます。

3-1 セラミックを使うことのメリット

見た目が本物の歯のようにきれい

透明感のある美しい素材で、自分の歯の色に合わせることができます。また、劣化もほとんどせず、プラークなどの汚れもつきにくいので変色することはほぼありません。セラミックを選ぶ方の多数がこの見た目を重視してのことです。

強力に接着し虫歯が再発しにくい

銀歯の「合着」と違ってセラミックの「接着」は歯とほぼ一体化します。セメントが歯とセラミックの内部にそれぞれ入り込むためです。そのため咬む力によりセメントがなくなっていくということもないので、隙間から細菌が入って虫歯になったり外れたり、ということはないのです。

3-2 セラミックを使うことのデメリット

保険外のため費用が高額になる

セラミックは自由診療となります。歯科によるので一概には言えませんが、およそ5~10万円(1本)と言われています。1本だけならまだ良いですが何本もある場合の負担は結構大きいです。

材質によって破損する場合がある

歯ぎしりや噛みしめる力が強い場合、欠けてしまうことがあります。再度セラミックをかぶせ直してもまた破損してしまうこともあります。

その場合はマウスピース(ナイトガード)を使用し、ガードする必要があります。

4.詰め物が取れたときの対処法

この章では、虫歯治療で銀歯やセラミックの詰め物を施した際、その詰め物が取れてしまった場合の対処法を紹介していきます。

4-1 取れた歯は絶対に自分で元に戻さない

詰め物が取れてしまうと、不安になってどうしても慌てて元に戻したくなりますが、絶対にやめてください。ぴったり元通りにご自分ではめることはほぼ無理です。そうすると詰め物が変形したり、土台の歯が欠けてしまうことがあります。

また、きちんとついているわけでないので食事などと一緒に飲み込んでしまう恐れもあります。詰め物が取れた時に真っ先にすることは歯科の予約を取ることです。歯科によっては優先的に診療してくれるところもあります。

4-2 取れた部分の歯をこまめに磨く

詰め物が取れてしまった歯はしっかり磨いてください。今まで詰め物で守られていたものがなくなり、脆い象牙質が露出している状態です。詰め物が取れたからといって、2~3日ですぐに虫歯が進行するようなことはありませんが、汚れが溜まりやすくなってしまいます。

いつも以上に丁寧に磨くことを心掛け、歯科に行くまでに虫歯を進行させることがないようにしましょう。ただし「しっかり磨く=力まかせにゴシゴシ磨く」ではありません。歯を傷つけてしまいます。優しく磨き残しのないようにしてください。

4-3 取れた詰め物は容器で保管する

取れた詰め物は必ず容器に入れて保管しましょう。詰め物は少しの力でも変形してしまったり破損してしまう恐れがあります。ティッシュやビニール袋などでは誤って押しつぶしてしまったりして危険です。

また、ゴミと間違えて捨ててしまったり、うっかり失くしてしまう可能性も高いです。取れた詰め物を再度詰める場合もあるので、硬さのある容器にきちんと保管して歯科に持参しましょう。

4-4 取れた側と反対の歯で物を噛む

詰め物が取れた歯とは反対側の歯で噛むようにしてください。詰め物が取れた歯というのは一度虫歯になり削っているわけですから、非常に脆くなっています。そこで硬いものなどを噛んだ場合、ヒビが入ってしまったり、最悪、割れてしまいます。

取れた詰め物を元に戻すだけでは済まず、神経を抜いたり抜歯をしなければいけなくなったり、大掛かりな処置が必要になってしまいます。そのような事態を防ぐためにも、詰め物が取れた側の歯は使わないように気をつけてください。

5.まとめ

詰め物・かぶせ物の材質を決める時、「値段」「見た目」を真っ先に考えがちですが、それよりももっと大事なことがありました。2次カリエス(虫歯)になりやすかったり、金属アレルギーのリスクが高まったり、詰め物自体の耐久性の違いなど、多角的に見てメリット・デメリットを洗い出し、自分に合った治療法を選びたいものです。

また、詰め物・かぶせ物をしている以上、取れてしまったり欠けてしまうリスクは付き物です。突然取れてしまったらどうしたら良いのか、すぐに虫歯は進行してしまうのかなど、事前にある程度知っておけば落ち着いて対処できます。

虫歯は非常に再発しやすい病気です。予防しやすい環境を整えましょう。

経歴

1968年 東京歯科大学 卒業
1968年 飯田歯科医院 開院
1971年 University of Southern California School of Dentistry(歯内療法学) 留学
1973年 University of Southern California School of Dentistry(補綴学・歯周病学) 留学
1983年~2009年 東京歯科大学 講師
現在に至る

執筆者:歯の教科書 編集部

執筆者:歯の教科書 編集部

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